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◇Tuesday Afternoon / Moody Blues2010年06月29日 04時17分09秒


The Moody Blues Tuesday Afternoon Live 1968 Jazz Blitzen


昨日久しぶりに、Moody Bluesの「Tuesday Afternoon」を聞いた。
この曲を始めて聞いたのは、1984年か1985年にNHKで放映された、ロックヒストリーのドキュメンタリー番組の中で流れた、1960年代のプロモーション・ビデオでだった。

Moody Bluesの曲はこの時2曲紹介されており、古い曲として「Tuesday Afternoon」が紹介されていたのだ。
この時の映像をYouTubeで探してみたのだがなく、冒頭にあるのは白黒の古いライブの映像らしい。

私の見た映像は、サイケデリックな色合いのスタジオの中にバンドセットが組まれていて、王子様のような衣装を着たヴォーカルのジャスティン・ヘイワードが、憂いをこめた表情でこの歌を歌い上げる。
バンドメンバーはその周囲で黙々と演奏を続け、後半のフルートのソロのときにレイ・トーマスがクローズ・アップされるというカラー映像である。

このときのボーカルのジャスティン・ヘイワードが、まるで一条ゆかりの漫画に出てくる男の子のようで、面食いの私にはど真ん中だった。
しかし、ジャスティン・ヘイワード以上に興味を惹かれたのは、彼の声にまとわりつくような、オルガンの音色と後半のフルートだった。
オルガンの音色がボーカルのけだるさを増幅させて、この曲に風景を与えているようにも感じた。

この曲が見せるボーカルとオルガンの風景は、家の近所だったり、会社での外回りだったり、学校の帰りだったりというなんとなく中途半端な場所で昼下がりという中途半端な時間に、今週もまた一週間が始まってまだ二日しか経っていないなとか、そんな感じの軽い疲労の中、空は少し曇ってきて雲間から太陽の光がこぼれおちるのをなんとなく眺めているような、そんな気だるさである。
そして後半に入るフルートが、“火曜日の昼下がり”から夕暮れに変わっていく中で、理由のない不安を表現しているように感じた。
まるで、カミュの「異邦人」を読んでいるかのような印象でもあった。

歌詞の内容を確認したわけではないので、実際にこの曲がそういう風景を表現しているのかどうかは知らない。
ただ、私の頭に勝手に浮かんできたこなんてことのない昼下がりの一面に、私はすっかり魅了され、ずっと忘れることができなくなってしまった。

1985年頃は、ネオアコースティックといわれたインディーズ系のものと、ニューウェイブ系の音楽がまだまだ流行している時期で、この後に流行するハモンドオルガンを駆使したカフェミュージック系の音楽は、それほど私たちの耳に届いてはいなかった。
しかも、70年代に活躍していたプログレ系のバンドは、軒並みニューミュージックに押されてどんどんとポップ路線を邁進していた時期だったので、「Tuesday Afternoon」を聞いたときに、Moody Bluesがプログレなのだという認識はまるでなかった。
当然、周囲の友人たちでMoody Bluesが好きだという人は皆無だったし、知っているという人さえ少なかった。

録画した番組の中の曲は、途中で切れてしまって全部は聴くことができない。
そのうちレコードからCDに以降してベスト盤などを探したりもしたが、「Tuesday Afternoon」の入ったものには出会えずにそのままきてしまった。

今、YouTubeの中であの時見たプロモーション・ビデオではないにしろ、あの時期のMoody Bluesを見ることができる。
そして、この白黒のジャスティン・ヘイワードは、あの時見た映像よりも更に若い頃のものらしく、そのかわいさに再びノックアウトされつつ、なんとなくちょっと疲れつつもどきどきするような火曜日の昼下がりを感じるのだった。



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