Copyright & 2006 by makura GEKIDAN Shirakaba. All Rights Reserved.
 無断転載を禁ず
Google
WWW を検索 げきだんしらかば を検索


◇フンフルトゥ 東京公演 20122012年06月29日 04時59分24秒


Huun-Huur-Tu - Live at Porgy and Bess 2010 05 10

13年ぶり、東京三鷹の武蔵野市民文化会館 小ホールにて行なわれた、Hunn-Huur-Tuの東京公演に行ってきた。

フンフルトゥ 日本ツアー2012詳細
http://www.harmony-fields.com/a-huunhuurtu/

私たちは1999年に茨城県つくば市の公演で彼等の演奏を聴いているのだが、以前はスタッフとして会場を飛び回っていたので、席でゆっくり聞くのはこれが初めてだ。

13年前もそうだったのだが、彼等はロシアでも屈指の芸術家であるので、世界中を飛び回っているスーパースターだ。日本であまり知名度が高くないのが、もったいないと思われるくらいだ。

1998年、1999年と同じように、今回の公演も「祈祷」から始まった。
これは本当にいつ聴いても圧巻である。彼等のコンサートのオープニングの定番だが、初めて聴いたときも二度目のときも、そして今回も彼等が一音発した瞬間、身震いするほどの迫力があり、伴奏のないこの歌によって、観客はすっかり彼等の世界に引き込まれてしまうのだ。

演奏された曲は定番の曲が多く、CDなどで馴染みのある耳覚えのある曲ばかり。
一時期は彼等の曲ばかり聞いていた時期があったので、安心して懐かしく聴く事ができた。

つくば公演のスタッフを一緒にやっていたIさんが、兵庫の公演を見た感想をメールしてくれたのだが、「演奏や歌には影響はないものの、カイガルオールは咳をしていて辛そうだった」と言っていた。東京公演でもステージで咳をする姿があり、少し元気がない様子だったのが気になったが、彼女が言うように演奏や歌にはほとんど影響を感じさせなかった。


今回の日本ツアーは、長年トゥバに親交を持ち、トゥバを日本に紹介した第一人者の一人である、等々力政彦氏のプロデュースによるもの。
彼は札幌在住の嵯峨治彦氏と二人の、「タルバガン」という喉歌ユニットのメンバーでもあり、自身もフーメイやトゥバの楽器を演奏する。

1998年と1999年のつくば公演のときに、公演資料を作るために、当時ほとんど知られていなかった喉歌のことについてメールで連絡をとったところ、「コンサートの手伝いをしたい」と当時関西の学生さんだったのに、わざわざフンフルトゥのためにつくばまで出てきたのが彼だ。
手助けをお願いしたのはこちらからだったが、彼の熱意には当時から非常に圧倒され、1998年のときにも楽屋付きのお手伝いをしてくれたし、1999年の公演のときにはつくばの今はなきライブハウス「AKUAKU」でタルバガンによるプレライブが行なわれ、フンフルトゥの公演当日も最後の何曲かを一緒に演奏するという快挙を成し遂げた。

フンフルトゥが世界的なスーパースターであることを考えると、今ではちょっととんでもないことだったとも思ったりする。ビートルズがあまりよく知られていない田舎の土地で公演をしたときに、彼等と友人だからステージで一緒に歌わせろと言っているようなものだからだ。
しかし、友人である等々力氏のステージ参加の申し出に、フンフルトゥのメンバーはとても喜んでいたし、懐の広いつくばのオーガナイザーN氏も非常に面白がっていて、当初苦い顔をしていたのは招聘元の人達だけだった。
しかし1999年の公演は、あの日あった過酷な状況をものともせず、至上最高の演奏であると、その演奏を聴いた人であれば誰もが認めるものとなった。

今回は等々力氏が自ら招聘し、誰に気兼ねすることもなくフンフルトゥをサポートすることができ、感無量であったことだろう。
今回彼は、コンサートの資料を自作し、公演パンフレットもトゥバについて非常に充実した内容で資料として販売し、コンサートの途中で何度かMCとして登場して楽器やフーメイについて説明しており、彼のトゥバ愛をいかんなく発揮しているように見えた。


今回の公演でつくば公演と違っていたところをあげるとしたら、当時の主力メンバーであり主にフーメイ、口琴、二胡のような形の楽器「プザーンチゥ」を担当していたアナトーリ・クーラルに代わり、若いラジク・テュリュシが参加していること。
ラジクもプザーンチゥや口琴を担当し、「ショール」という縦笛も演奏する。
以前はフーメイや歌のパート担当が比較的はっきり分かれていたが、今回はアナトーリがいない分、カイガルオール・ホバルグの担当パートの割合が以前よりも多く感じた。
ラジクもフーメイを担当しているが、アナトーリが以前担当していたパートを、ラジクがそのまま担当するというものではないようだ。

つくば公演では“口琴名人”と言われたアナトーリが主に金属口琴デミル・ホムスを演奏し、彼の超絶技法でもある手離し演奏(口琴の弾くところを口の中に入れ、舌で演奏する技法)も披露され、大喝采を浴びた。
今回は、カイガルオール、ラジクとサヤン・バパの三人がデミル・ホムスを演奏していた。

打楽器担当のアレクセイ・サルグラルは、1998年と1999年は片面の大きなタンバリンのような太鼓(デュンギュル?)を演奏していたのが、今回は冒頭の動画に見られるような大きな両面太鼓を演奏していた。大きな太鼓はあまり記憶にないのだが、つくば公演でも演奏されていたかどうかは不明。ただ、今回は片面太鼓の出番はなかった。
また、彼も一時期は高音のフーメイの曲で、フーメイの種類そのものでもある「スグット」をソロで歌っていた時期もあったのだが、今回カイガルオールの低音フーメイ「カルグラー」は披露されたものの、「スグット」は披露されなかった。

演奏や歌そのものも、やはり以前とは彼等の年齢も体型も違うせいもあるし、パートの変化もあるので、全体の雰囲気は変わったといえる。
しかし、いぶし銀の魅力が加わわり、以前と今回とは比較できないクオリティのステージだったと思う。
悲しい曲も楽しい曲も、彼等のパフォーマンスは素晴らしかったし、全体を通して非常に風景を感じえる内容だったと思う。

ただ一つ口琴だけは、アナトーリの超絶技法をもう一度フンフルトゥの演奏の中で見たかったのだが、こればかりはないものねだりだ。
アナトーリ・クーラルは、フンフルトゥの初期のCDに参加しており、赤いジャケットのCDでは真ん中に写っているフランキー堺によく似た人物だ。
YouTubeにあった2001年のドイツでのステージで、手離し演奏ではないものの、彼の素晴らしい口琴の演奏を確認することができる。
非常に長い動画で、33分50秒くらいからラストまでに口琴が演奏されている。
口琴ファンは、こちらもぜひチェックしていただきたい(音が小さめなので、できるだけ大きな音で聴いてほしい)。

Huun-Huur-Tu: May 18, 2001, Kiel, Germany
http://youtu.be/LGSDk7yCG88?t=33m50s

冒頭のYouTubeの動画は2010年のもののようで、今回の公演の形態に一番近いと思うものを選んでみた。


そうそう、忘れてならない大きな変化は、観客のほうだ。
今回も昔からのフーメイファンや口琴ファンの馴染みの顔が見受けられ、しばらくそのような場に顔を出さなかった私は、非常に懐かしくみなさんに「ご無沙汰しています」と挨拶をした。

昔だったらコンサートが終った後、みんな感極まってロビーでいつまでも喉歌をうなったり、口琴を演奏したり、中には馬頭琴を持参するものもいたりしたのだ。
私がスタッフで参加するようなイベントでも、こちらが「会場閉めますから、速やかに退場ください」と言われなければ動かなかった。

でも、今回そういう人は誰一人としていなかった。
みんな大人になったのだなと、それはものすごく印象的だった。


※今回は等々力氏のプロデュースする公演の記事のため、グループ名、トゥバや喉歌などに関する表記は、等々力氏が推奨する表記に合わせました。 つくば公演当時は、フンフルトゥは「フーン・フール・トゥ」、フーメイは「ホーメイ」と表記しており、今回の公演の表記とは異なりますが同じものを指しています。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
下記の文字を解答欄に入力してください。
しらかば

コメント:

トラックバック




Copyright ©2006 by makura GEKIDAN Shirakaba. All Rights Reserved.
無断転載を禁ず