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◇Back in the Room / Bruce Foxton (ex The Jam)2014年12月01日 20時06分18秒


Back in the Room / Bruce Foxton


Number Six / Bruce Foxton

先日、The Jamの他のメンバーはどうしてるのだろうとふと思って調べてみた。
The Jam解散発表時に他のメンバーは寝耳に水だったり、The Jam時代のファンデータを共有させてもらえなかったり、他のメンバーが暴露本を出したり、版権に関して訴訟を起したりといろいろと噂はあったし、挙句再結成に首を縦にふらないPaul Wellerに対して、残りの2人でThe Jamの曲を演奏するバンドを結成したり、泥沼の様相を呈しているように見えていた。
しかし、The JamのマネジメントをしていたPaul Wellerのお父さんが亡くなったのをきっかけに、ベースのBruce Foxtonとは和解し、お互いのアルバムにゲスト参加するようになったニュースが聞こえてきて、古いThe Jamのファンとしては、非常に嬉しく思ったりしたのだ。
再結成の可能性はないとしても、それまで頑ななまでにThe Jam時代の楽曲やメンバーを否定するようにさえ見えていたPaul Wellerが、少なくとも自身のキャリアの原点を受け入れて、私たちの前に披露してくれたことが嬉しかったからだ。


Paul Weller and Bruce Foxton

The Jamの魅力は、スリーピースバンドに一番大事なバランスだったと思う。
少なくとも最高傑作といわれる3枚目のAll Mod Consまでは、そのバランスは非常に気持ちの良いものだった。
もちろん、Paul Wellerのエネルギッシュなパフォーマンスや、楽曲が魅力であることは言うまでもないのだが、当時のPaul Wellerはお世辞にもギターも歌も上手ではなかった。
パンクムーブメントの中、パンクの形式はとっていなくても、彼等がパンクバンドに括られた理由の一つは、歌とギターが下手というのがあったと思う。
ただ、他のパンクバンドよりはずいぶんとマシだったし、何より演奏によってその世界観を聞くものと共有できる楽曲は、他のパンクバンドには感じられないものだった。
勢いだけで突っ走っていたPaulWellerのギターと歌を全面的にサポートし、楽曲に世界観を与えているのは、Bruce Foxtonのベースだと感じていた。

デビュー当時はThe Whoからの影響を認めていたPaul Wellerだったが、彼が少しづつファンクに傾倒していくに従って、The Whoからの影響を語らなくなっていった。
でも、私は彼等から一番The Whoを感じていたし、少なくとも4枚目のSetting Sonsまではそれを感じていた。
5枚目のSound Affectsや、シングルAbsolute Beginners以降のロックからどんどんファンクよりになる音楽傾向の中で、Paul Wellerだけがどんどんと突っ走っていって、他の2人がおいてけぼりになっているような感覚と不安は、1982年の秋にPaul Wellerの独断による解散表明によって現実のものとなった。
その後のThe Style CouncilでThe Jamに存在していた世界観の共有というものが非常に希薄になってきて、楽曲のストーリー性よりもスタイルだったり、政治的なメッセージだったりが強調されるようになってからは、「それでもPaul Wellerがいい」と思っていても、どこか違和感をずっと感じていたのだ。

そして残りの2人BruceとRickはというと、The Jamの幻影にずっと取り付かれているようなニュースばかり聞こえてくる。
RickはThe GiftというThe Jamの楽曲を演奏するバンドを結成し、2007年にThe Jam30周年の記念にもPaul Wellerは再結成に首を縦にふらなかったものだから、結局Bruceも参加してFrom The Jamというバンドでツアーに出て、そのまま活動を続けたらしい。
Bruce Foxtonは、その他にもBig CountryのドラムとPete Townshendの弟のSimon TownshendとでCasbah clubというバンドを組んでいたりする。


Down In The Tube Station At Midnight - From The Jam (Official Video)

前置きがものすごく長くなったが、このアルバムは、Rickが結成したThe Jamの幻影から逃れられない残りのメンバーから、Rickが抜けてしまってBruceだけ残って作ったアルバムとのこと。
メンバーは紆余曲折の末、もともとThe Gift時代から参加していたギター&ヴォーカルのRussell HastingsとBruceの2人だけだ。

最初にFrom The Jamの動画を見たとき、まるでThe Jamがそのまま歳をとってステージにいるような感覚だった。
The Jamを解散するときに、メディアに対して「オヤジになってまでパンクをやっているなんて馬鹿げている」と言っていたそのままの姿がそこにある。
ギター&ヴォーカルのRussell Hastingsという人も、Paul Wellerの声に似ていなくもない。発音というか訛りもなんとなく似ているような気がするし、歌い方はそっくりだと思う。
外見も、サングラスをしているところを薄目で見れば、Paul Wellerに思えなくもないのだ。
ギターは少し違うような気もするが、それでもThe Jamが歳をとってそのままステージにいると言われれば、これがその姿なのだろうと思えてならなかった。

これは、The Jamが好きで仕方がないオヤジが演っているカヴァーバンドとは意味が違う。
それだったらほほえましく薄目で見て、その熱意に共感もできるかもれない。
あるインタヴューでPaul Wellerが、「音楽が好きで音楽で食べていこうと思うなら、自分の音楽をやればいい。そうでないのなら、別な職業に就くべきだ」と言っていた。
私はPaul Wellerの意見に賛成する。こういう形でThe Jamを見たくなかったというのが正直なところだった。
ただ、一連の動画を見て気づいたのは、私がPaul WellerのThe Style Councilで失われたと思っていた楽曲の世界観の共有というものが、そこには存在しているように思えた。
私の求めているものがそこにあるなら、一度きちんと聞いてみようじゃないか、というのが、このアルバムを購入した理由だ。
発売は2012年だったようなので、ずいぶんと遅れて手にしたわけだ。

このアルバムはBruce Foxton名義になっているが、From The JamのメンバーであるRussell Hastingsとの楽曲が収められている。
冒頭にある2曲目の「Number Six」と4曲目の「Window Shopping」、10曲目の「Coming on Strong」にはPaul Wellerも参加しているとのこと。

曲は、Setting Sonsの頃のThe Jamっぽいものが多いが、「Don't Waste My Time」のような後期のThe Jamのようなファンクっぽい曲もある。
一枚聞いて思った感想は、「The Jamが今でも活動していたらこうだったのかな」だった。
実質このアルバムはそういうものだろうし、もしPaul Wellerが抜けてもそのままバンドが存続していたら、こんなだったかもしれない。
ただ、Bruce Foxtonの中にあるThe Jamは、本当にぬぐってもぬぐえない幻影のようにそこに存在しているのかもしれないなと、私もBruce Foxtonの見ているThe Jamの幻影を一緒に見ているような気持ちになった。

でも、Echo & the Bunnymenのように、フロントマンが戻ってもその世界観が変わってしまったバンドもあるし、実際はどうだったのだろう。
少なくとも、The Jamの再結成にはまったく興味のないPaul Wellerでは確認のしようがないのだろうけれど。

From The Jamの活動は、Rickが抜けて実質Bruce FoxtonとRussell Hastingsのバンドになったのだから、このままずっとBruce Foxton名義でやるか、別なバンド名で再出発すればいいのにと思う。
Bruce Foxton自身がThe Jamの幻影を背負っているとしても、それはすでにThe JamではなくBruce Foxton個人のものなのだから。

Bruce Foxtonは、現在ニューアルバムを作成するために基金を募っている
出資金に対して様々な特典が用意されているようだ。
彼には心からのエールを送りたいと、真剣に思ってしまった。

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