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◇唐組公演 「夕坂童子」を観に行く2008年05月12日 03時40分57秒


東京舞台通信 唐組「夕坂童子」唐十郎

唐組公演はここ数年毎年観ている。今年の演目は新作「夕坂童子」。鶯谷や入谷など東京の下町を舞台にした内容だった。

唐組を最初に観たときは、その内容の難解さにただただ役者陣の熱を帯びた演技に圧倒されるだけだったが、最近は無理に内容を理解しようとせずに観る方が楽しめるということに気づき、赤いテントの中で繰り広げられる汗とつばしぶきがライトに光る、観客と役者の熱が一体になった舞台が楽しみになっている。
最初の頃は水戸の公演を毎年観に行っていたのだが、つくばを離れてからは東京に行くようになった。花園神社に行くことが多いが、西新宿の原っぱで一度観たときは「こんな場所がまだこの新宿の高層ビルの間にあろうとは」と思えるような風景で、唐組の赤いテントがその場所に非常にマッチしていて不思議な感覚に襲われた。
今年の公演案内のはがきにこの西新宿の原っぱがなかったので不思議に思っていたが、後で旦那が「あの原っぱは何か建物が建つことが決まったらしいよ」と言っていて、もうあそこで唐組を観ることができないことを非常に残念に思う。

私が観に行くようになったのは、稲荷卓央と藤井由紀が主役をするようになってからである。当時一緒に行っていた友人は稲荷があまり好きではないようで、どうして彼が主役なのか疑問に思っていた様子だったが、個人的には脂の乗り切った鳥山や久保井、辻といった古参の役者陣がいい味を出していたし、良くも悪くも稲荷の汗まみれの演技をサポートしていて、私はその一体感が好きだった。ここ数年は稲荷の演技ものってきていて、藤井とのコンビも不動のものと思われていた。
数年前から丸山厚人と赤松由美が、主役の稲荷と藤井に続く準主役級の役どころを演じるようになり、この二人が登場した頃は細身の稲荷と藤井のコンビとは対照的な、肉感的な丸山と赤松の非常に熱く濃い演技にちょっとした違和感を覚えていたのだが、おととしあたりから特に丸山が良くなってきており、稲荷との熱い演技バトルが楽しみになっていていた。

今回とったチケットは10番台で、久しぶりに舞台から二列目に陣取る。「今年はどうか水がでませんように」と祈りつつも、何が舞台から飛んでくるかわからない危機感にわくわくして観るのも醍醐味のひとつなのだ。 実際、鳥山が便器(作り物)を洗ったたわしに水を含ませて客席にほとばしったときは、「きたきた」と思ったし、舞台袖から大きな水槽が出てきたときは、それが客席側にひっくり返されるのではないかと思って、前列がどよめいたりしたのだった。(過去公演で、実際役者がこの水槽に飛び込んだときに、大量の水があふれて客席に流れ込んだことも数回あった。水と一緒にビー玉が飛んできたこともある。舞台の端には客席の最前列の人がそれらを回避するため、ビニールシートが用意されており、最前列の観客が息を合わせてそれで防御する仕組みになっているのだが、最前列の客の息が合っていないと、二列目以降の客まで被害にあってしまうのだった。被害に合うのもまた一興なのだが、これを知っていて被害に合いたくない客は後ろの方に座りたがる傾向がある。今回私は二列目に座り、最前列が唐組ファンのおじさん達の様子だったのだが、舞台前挨拶でビニールシートの説明がされたとき「前のかたがたがんばってくださいね」と声をかけると、「俺たちちょっとひっかけているから、保障はできないけどがんばります」と答えてくれた。実際おじさんたちは、なかなかがんばってくれていたのだった。)

しかし、ゴールデンウィークを過ぎ、大阪・東京と続いた公演の中ほどで行われ、天気もそれまで続いた晴天から一気に三月に逆戻りしたような寒い雨天の中で行われたせいか、役者陣に少し疲れが見えているような気がした。
特に藤井は風邪でもひいているのかと思われるほど声がでておらず、稲荷の演技も丸山におされ気味。今回の話は中心は稲荷の役どころではあっても、どちらかというと丸山・赤松コンビの役の方が話の重要性が高い役どころであったせいか、稲荷・藤井は二人におされているようにさえ見えた。
それ以上に、丸山の演技は格段に向上しているようで、以前はただただ熱いだけでその肉感的な体格からかもし出される存在感は、時として暑苦しくさえ感じられるときもあったのだが、今年は少しほっそりして声にも抑揚が出てきて、この日の舞台で一番光る演技をしていたように思う。 私が観に行くようになって10年以上の月日が経っており、稲荷も藤井も唐組以外の仕事も少しづつ増えている様子で、そろそろ主役交代の時期に入っているのだろうか…。それはそれで楽しみでもあるのだが、稲荷・藤井のコンビを見ることができなくなるのはちょっとさびしい。 若手陣も育ってきている様子で、商店街のマダム三人組を演じていた多田亜由美をはじめとする三人や、最初に出てくる胸毛男の演技も格段に良くなっている。

今回唐十郎は、女性(?)役での出演だった。セーラー服におさげ髪(??)の唐十郎が、なぜか年配者向けの茶色い軽量ウォーキングシューズをはいているのがおかしかった。



唐ファン http://homepage3.nifty.com/shibai/index.html

コメント

_ oinari3 ― 2008年05月24日 22時53分12秒

本日、「夕坂童子」観てまいりました。 緑 魔子さんの芝居や蜷川演出の唐さんの芝居は観たことがあり密かなファンでありながら紅テントは初観でした。「秘密の花園」を連想させるタイトルに引かれたのもあり、ワクワクと雑司ヶ谷 鬼子母神へ。雨音打つテントの中むせかえる人いきれの中「夕坂童子」は始まりました。唐さんと久保井さん意外は誰も知らなかったのですが、乗っけから、稲荷さんの唐魂の入ったモノローグにやられました!藤井さんや 辻さん、特に若手の丸山さんの、台詞に目に浮かぶ幻想の唐ワールド鴬谷。来て良かった! また観たい素晴らしい芝居でした。 ただ一つ心配なのは、素晴らしい役者さんの中 赤松さんだけ棒読みの台詞に風景も浮かばず台無しな存在にガッカリしました。せっかくの唐ワールドが。唐組を抜けるべきです。

_ makura ― 2008年05月25日 01時38分48秒

赤松の演技は確かに、まだまだ抑揚が足りない感じが否めないのですが、今回の役どころは特にそのへんが顕著に出ていたかもしれないですね。彼女は強い女を演じるとそれなりに存在感があるように思うのですが、女らしい役どころがいまいちのように思います。主役の藤井の存在感に圧されて、今回のような似た感じのキャラクターだと、どうしても比較してしまうかも。
それでも最初の頃出てきたときは、なぜこの抑揚のない役者がこんなに重要な役どころを演じるのだろうかと疑問だらけでしたが、その頃に比べたらかなり良くなってきているように感じます。
個人的には、彼女は丸山と同時期に出てきた印象があるので、どうしても丸山の成長とも比較してしまうのですが、唐組の中でもがんばってほしい役者の一人ではあります。
唐組の舞台は、あの紅いテントの中で繰り広げられるひとつの世界を役者と共有する魅力があり、役者の成長もそのうちのひとつでもあると思います。また来年の彼女も是非観てあげてほしいです。

_ oinari3 ― 2008年05月25日 04時27分18秒

そうですね。初観の私が1度観ただけで語ることではありませんでした。申し訳ございません。 稲荷さんや藤井さん、久保井さんに気田さん方々が 余りに唐節を流れるごとく自分の魂と合わせて奏でていた 嬉しさとショックに 赤松さんに対して厳しかったかもしれません。 少し上方ではなく、客席を見ながら芝居をしていたので台詞が入っていない様に見えたやもしれません。 いづれにしても、唐さんは天才ですっ!! 唐組 見続ける楽しみと覚悟が出来ました。感謝です。

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