◇広辞苑は流行物か?過去の遺物か?(ちょっと大げさ) ― 2008年01月22日 03時14分44秒
ちょっと嫌味な話で恐縮するのだが、あまりにも驚いたので書くことにした。
今日行った近所の本屋でのことである。
その本屋は大手スーパーの中のテナントなので、でかい買い物カートをひきずって売り場にいる人がたまにいるのだが、普通のモラルを持ち合わせていれば、その狭い本屋の通路にカートを持ち込めばどういうことになるかということくらいちょっと考えれば理解できるので、そこにカートを持ち込む人は稀である。
だが、その日はその本屋のせまいコミックコーナーの通路を、カートで占拠して立ち話をしている女性がいた。話相手の女性は小学校高学年くらいの子供連れで、子供は親に漫画を買ってもらおうとがんばっているが、当の親はカートのおばさんとの話に夢中で子供の話は聞いていない。
その通路の本を見たかったのだが、私に気づきカートを少しだけよけてはくれるものの、そんな幅では私の太い身体で到底そこに立ち止まって本を見ることは不可能なので、そこで本を探すことを断念して手に持っている本を会計するためにレジに向かった。
私がレジをしていると、件の女性も会計をするためにレジにきて私の後ろに並んだ。すると、レジの横には新しく改訂された広辞苑が山積みされている。
子供の母親がそれを見て
「これって今流行っているのよ」
と子供とカートの女性に言ったのだ。
「広辞苑が流行りもの???」と思ったが、子供の母親とその子供、カートの女性はこう会話を続けた。
カートの女性 :「へー、そうなんだ。初めて見た」
子供の母親 :(子供に向かって)「これを読めば、ものすごく勉強になるよ。なんでもわかるようになる。でもすごく高いの。何万もするの」
子供 :(山積みされていたのは机上版だったので)「でも、これ12,600円って書いてあるよ」
子供の母親 :「そうそう、一万円ちょっとするのよね」
カートの女性 :「でもその厚さだと、全部読むのにすごく時間がかかりそうね」
子供 :「それはものすごく勉強になりそうだけど、そんな厚い本を読むほど暇じゃないのよね。テレビとか見なきゃなんないし」
カートの女性 :「あー、それはそうだね。あはははは」
隣のレジが空いたのでその会話はここまでで終わったのだが、私はレジでふきだしそうになるのをこらえるのに必死だった。
確かに広辞苑を全部読んでそれを理解すれば、ものすごい勉強になるだろう。だが、その前に広辞苑というのは本来そういう読み方をする本だったろうか。「テレビなんかを見なきゃなんないからそんな暇はない」という子供の意見はある意味正しいだろう。
広辞苑が「流行り物」として認識されている事実にも驚く。今年改訂版の第六版が発行になりニュースにもなっていたので、「話題なのよ」と言いたかったのだろうか。それとも「流行っているのだから、その流行にのって勉強してみたら」と子供に勧めたかったのだろうか。いずれにしても、子供に対してその勧め方はいかがなものなのか。
何万もすると思い込んでいる“教材”を、もし子供がその場で「じゃあ、勉強するから買って」と言えば買ったのだろうか。母親が値段を間違えているところを正しく指摘する子供の方が、ずっと冷静である。欲しい漫画を買ってもらえず、欲しくもないわけのわからない高い本を無理やり読まされるくらいなら、それくらいの冷静さが必要なのも当然のことだろう。
それにしても、広辞苑の存在を「初めて」と言う人もすごいと思う。年齢的には私とそうかわらないくらいの女性である。日本で一番権威のある辞書とふれこみの高い広辞苑だが、それを「知らない」と本屋のレジ先で言い切る神経というのは、ある意味立派だとも思った。
いや、広辞苑の存在自体を知らなくても別に悪いことはない(そうか?)。友達が「流行っている」というものを知らなくてもいいし、広辞苑なんか知らなくても生活する上ではまったく問題はないだろう。事実、私も広辞苑の第四版を持ってはいるが、ネットでなんでも調べられる今となっては、購入して開いたことは数回程度のものだ(それも問題か?)。
ネットでなんでも調べられる世の中とはいっても、世の中には知らないことがいっぱいある。それを知る手がかりのひとつとして辞書があり、その代表的な一つである広辞苑の名前くらいは知っておく必要ってあるんじゃないかと思ったのだ。
果たして、この人たちが広辞苑という本が本来どういう本なのかを、本当に知っていたのかどうかは不明である。「広辞苑を買って読んでほしいのは、お子さんではなくあななたちの方ではないですか?」と、つい思ってしまった。
Wikipedia「広辞苑」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BA%83%E8%BE%9E%E8%8B%91
岩波書店「広辞苑」
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/jiten/
今日行った近所の本屋でのことである。
その本屋は大手スーパーの中のテナントなので、でかい買い物カートをひきずって売り場にいる人がたまにいるのだが、普通のモラルを持ち合わせていれば、その狭い本屋の通路にカートを持ち込めばどういうことになるかということくらいちょっと考えれば理解できるので、そこにカートを持ち込む人は稀である。
だが、その日はその本屋のせまいコミックコーナーの通路を、カートで占拠して立ち話をしている女性がいた。話相手の女性は小学校高学年くらいの子供連れで、子供は親に漫画を買ってもらおうとがんばっているが、当の親はカートのおばさんとの話に夢中で子供の話は聞いていない。
その通路の本を見たかったのだが、私に気づきカートを少しだけよけてはくれるものの、そんな幅では私の太い身体で到底そこに立ち止まって本を見ることは不可能なので、そこで本を探すことを断念して手に持っている本を会計するためにレジに向かった。
私がレジをしていると、件の女性も会計をするためにレジにきて私の後ろに並んだ。すると、レジの横には新しく改訂された広辞苑が山積みされている。
子供の母親がそれを見て
「これって今流行っているのよ」
と子供とカートの女性に言ったのだ。
「広辞苑が流行りもの???」と思ったが、子供の母親とその子供、カートの女性はこう会話を続けた。
カートの女性 :「へー、そうなんだ。初めて見た」
子供の母親 :(子供に向かって)「これを読めば、ものすごく勉強になるよ。なんでもわかるようになる。でもすごく高いの。何万もするの」
子供 :(山積みされていたのは机上版だったので)「でも、これ12,600円って書いてあるよ」
子供の母親 :「そうそう、一万円ちょっとするのよね」
カートの女性 :「でもその厚さだと、全部読むのにすごく時間がかかりそうね」
子供 :「それはものすごく勉強になりそうだけど、そんな厚い本を読むほど暇じゃないのよね。テレビとか見なきゃなんないし」
カートの女性 :「あー、それはそうだね。あはははは」
隣のレジが空いたのでその会話はここまでで終わったのだが、私はレジでふきだしそうになるのをこらえるのに必死だった。
確かに広辞苑を全部読んでそれを理解すれば、ものすごい勉強になるだろう。だが、その前に広辞苑というのは本来そういう読み方をする本だったろうか。「テレビなんかを見なきゃなんないからそんな暇はない」という子供の意見はある意味正しいだろう。
広辞苑が「流行り物」として認識されている事実にも驚く。今年改訂版の第六版が発行になりニュースにもなっていたので、「話題なのよ」と言いたかったのだろうか。それとも「流行っているのだから、その流行にのって勉強してみたら」と子供に勧めたかったのだろうか。いずれにしても、子供に対してその勧め方はいかがなものなのか。
何万もすると思い込んでいる“教材”を、もし子供がその場で「じゃあ、勉強するから買って」と言えば買ったのだろうか。母親が値段を間違えているところを正しく指摘する子供の方が、ずっと冷静である。欲しい漫画を買ってもらえず、欲しくもないわけのわからない高い本を無理やり読まされるくらいなら、それくらいの冷静さが必要なのも当然のことだろう。
それにしても、広辞苑の存在を「初めて」と言う人もすごいと思う。年齢的には私とそうかわらないくらいの女性である。日本で一番権威のある辞書とふれこみの高い広辞苑だが、それを「知らない」と本屋のレジ先で言い切る神経というのは、ある意味立派だとも思った。
いや、広辞苑の存在自体を知らなくても別に悪いことはない(そうか?)。友達が「流行っている」というものを知らなくてもいいし、広辞苑なんか知らなくても生活する上ではまったく問題はないだろう。事実、私も広辞苑の第四版を持ってはいるが、ネットでなんでも調べられる今となっては、購入して開いたことは数回程度のものだ(それも問題か?)。
ネットでなんでも調べられる世の中とはいっても、世の中には知らないことがいっぱいある。それを知る手がかりのひとつとして辞書があり、その代表的な一つである広辞苑の名前くらいは知っておく必要ってあるんじゃないかと思ったのだ。
果たして、この人たちが広辞苑という本が本来どういう本なのかを、本当に知っていたのかどうかは不明である。「広辞苑を買って読んでほしいのは、お子さんではなくあななたちの方ではないですか?」と、つい思ってしまった。
Wikipedia「広辞苑」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BA%83%E8%BE%9E%E8%8B%91
岩波書店「広辞苑」
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/jiten/
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