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◇2014年Godzillaゴジラを観る【ネタバレ注意】2014年07月30日 04時19分30秒

新作のゴジラを観て来た。
長文な上にネタバレを含む可能性があるので、これから映画を観る人はこの記事を読まないでほしい。
だったら書くなと言われそうだが、すでに観た人とどこまで感想を共有できるのだろうというのも、気になるところなので、その点ご容赦願いたい。



「GODZILLA ゴジラ」予告3

ゴジラ(2014年版)公式HP
http://www.godzilla-movie.jp/

正直に言うと、私がゴジラをまともに観たのはこれが初めてだった。
初代ゴジラやCSやNHKで放送されていた旧作のゴジラについて、なつかしさも相まって録画して観たりした結果、今回のゴジラは3Dだし一つ観てみようと軽い気持ちで観たのだった。
ゴジラの豆知識や、今回のゴジラについて制作サイドが意図したことなどは、監督インタビューなどを見て少しは知っていたが、事前に誰かのブログを見たり公式HPなどには触れず、ストーリー自体はまったく白紙の状態だった。

観たのは字幕IMAX-3Dのゴジラ。
率直な感想は、『容赦ないな』だった。
そしてこの映画は怪獣映画である以前に、ドキュメンタリー映画であり、戦争映画であり、そしてウエスタン映画であると思った。

3D映画自体それほどたくさん観ているわけではないが、この立体感はかなりの臨場感を感じる。
痛烈に感じたのは、CGは容赦ないということ。
日本の特撮はやはり偉大だと思えた。
特撮であるということは、頭のどこかで傍観者になれる。
自分がそこにいるようなリアルな感覚と、でもどこか作り物であるという冷静さを残す余地が観ている側に用意されているような気がするのだ。
しかし、CGはまるでそこにあるような、自分の目の前で起きているかのような錯覚を起す。
それが3Dであればなおさらだった。


最初の富士山ろくの原発(これは浜岡原発だろうか)、オアフ島、ラスベガス、サンフランシスコなどの町が破壊される。
地面が大きく揺れて、津波が起き、電力が失われる。
最初からゴジラが登場するまでがけっこう長いのだが、ここまでの間に東日本大震災を彷彿とさせるシーンがこれでもかと出てくる。
これらの映像がかなりきつかった。
鳥肌がたち、涙がとめどなくあふれてきて、途中何度も叫びそうになった。
臨場感のあるサウンドと大画面の3D画像はそれほどリアリティがあったのだ。
“まるで自分がそこにいるような感覚”
でも、こういう画面でそのような臨場感を感じたいとは、私はまだ思わなかった。
まだ早いよ、まだ観たくない。震災の後の、あの時の何もできない自分自身がまざまざと蘇ってきて、映画の臨場感とは別なところで涙が止まらなかった。

事前に観た監督のインタビューというのが、これまでのゴジラに対するインスパイアと、この物語が東日本大震災をある程度意識して作られたということだった。
私が観たインタビューでは、初代のゴジラが作られたきっかけが第五福竜丸のビキニ環礁被爆事件に端を発したものであることで、東日本大震災をある程度意識しなければならないだろう程度のものだった。

しかし、この物語はそのまま東日本大震災そのものであると感じた。
ゴジラと相反し、こいつが近づくと電波を妨害し停電が起きるというムートーという怪獣の名前も、東日本大震災当時東電の副社長だった武藤栄氏のことだろうと思った。
最初のシーンは謎の地震によって原発が破壊されるシーンだし、オアフ島での津波のシーン、前半のほとんどは東日本大震災をまんま意識したと思えるところばかりだ。
その他にも、1950年代の度重なる水爆実験の真相、広島の原爆投下の時間に停まった時計など、日本の原子力に関係する要素がてんこ盛りである。

初代のゴジラは、第五福竜丸の水爆実験被爆を受けて、日本人が作った映画だ。
日本人が自身の中で放射能の利用を考えるというテーマが隠されていた。
それを外国人が見て、日本人と同じ感覚を受けていたのだろうかというのは、いささか疑問に思うところだ。
日本人の全てがあの震災を未だに意識して生活しているとは思わないが、少なくとも多くの人が忘れたくても忘れられずにいると思う。
作った人が外国人であったとしても、日本に縁の深いゴジラという映画の中で、こういうシーンが生々しく再現されるのは、未だ少し時期尚早なように思う。
しかしそう思うのは、私が被災者でもない傍観者だからなのだろうか。

はっきり日本人の重要な役どころである渡辺謙は、ゴジラなどの生物を極秘に研究するという、芹沢博士の役。
初代ゴジラの芹沢博士はゴジラ退治に大きな役割を担い、人民の命を守るために自らの命を呈してゴジラを殺した立役者だ。
しかし、渡辺謙の芹沢博士は、なんとなく傍観者である。
芹沢博士は何もしない。しようと思ってもなんとなくそれが効力を発揮しているようには見えない。
彼が役に立っているのは、ムートーとゴジラの説明をするところだけ。あとは、ただただ興味深げにムートーとゴジラが闘う様を観ているだけなのだ。
確かにこの物語には傍観者が必要であると思えるのだが、初代ゴジラの重要な役どころである芹沢の名前を持った科学者が、その役割を担う理由はどこにもないと思ってしまった。
それとも、芹沢博士は今の日本人の姿であり、被災者以外の日本人はすでに傍観者と化しているという、東日本大震災に対する日本へのメッセージなのだろうかと勘ぐってみたりもする。


大きな感想としてはこんな感じだが、その他こまごました感想は以下の通り。

今回の映画のムートーという怪獣は虫のようないでたちで、ゴジラと同じ放射能怪獣ということで、ゴジラよりもこちらの方が主なんじゃないかと思うような立ち居地だ。
これが、ギーガーのエイリアンのできそこないのような怪獣。
カマドウマのリアルな着ぐるみのような格好で、その怪獣が触れたところは、例のごとくスライムのようなベタベタが張り付いていたりして、口を開けた顔などはまるでエイリアンのよう。

それ以上にゴジラは、首が短すぎだし、目が小さすぎだし、腹が出すぎだし、なんとなく中年のゴジラという感じ。筋肉質な相撲取りにも見える。
ゴジラの咆哮も、初代の雰囲気を壊さないように工夫をしたというのは理解できたが、なんだかちょっと違うようにも思えたり。
違うように思えたのは、ゴジラが登場するところで伊福部昭の例の音楽ではなかったせいもあるのかも。
あの曲は、本当にゴジラとセットでインプットされていて、あの音楽でないとなんとなくゴジラでないようにさえ思えてしまう。
何より一番違うと思ったのは、ムートーにトドメを刺すシーン。
あの行動は人間的な意図を持たなければ絶対にしない行動だと思う。
けだものであるゴジラが、なぜあのような行動をするのか非常に疑問に思った。

そして、放射能を食っている怪獣相手に、1954年の水爆より威力が大きいと自慢する放射能爆弾で対向しようとする米軍。
サンフランシスコのこんな近くで放射能爆弾を爆発させたら、二次被害の方がでかいのではないかと突っ込みいれたくなる。
市民を守るためといいつつ、実は兵器自慢なのか。ああ、やっぱりアメリカってこういう国なのねと、ステレオタイプに感じてみたりする。
予告にもあるが、ゴジラと空母艦隊が並走するシーンも、なんでこんなでかい怪獣にこんなに近づいて船走らせてるんだろうか、という疑問が。
こんなに近づけば当然こうなるだろうというのはお約束だ。

何より強烈に感じたのは、ゴジラの去り方がウエスタンさながら「礼はいらねぇぜ」の世界である。
それにしても、ゴジラはなんのために出できたのか。大きく町は破壊されたが、ゴジラがいなければこの事件は解決を見なかった。
悪党がはびこる町にふらっと現れたヒーローが、多少荒っぽく町は壊れたりはするけれど、悪党と戦い去っていく。
用心棒の侍っぽい解釈もしようと思えばできるが、侍はこんなに町を壊さないので、やはりウエスタンなのだろうと思う。
ただ、ゴジラの攻撃のパターンは、ウルトラマン的であり、水戸黄門のようでもあると思ってしまった。

嬉しかったのは、久しぶりにお姿を拝見したジュリエット・ビノシュ。
40代くらいの人なら、「ポンヌフの恋人」のヒロインと言えば判るだろうか。
「汚れた血」からのファンとしては、年老いても変わらぬ美貌。あの透明感はなくなってしまったけれど、芯の強い女性を演じられるようになったのだなあとシミジミする。
ただ、彼女が原発のメルトダウンで死んでしまうことで、やはり福島の原子力発電所に最初に関わった放射能関係国がフランスであり、原子力エネルギーを推進しているのもフランスであるということで、フランス出身の女優が死んだのだろうかと、そっちの方に考えがいってしまったのが悔しい。


東日本大震災を忘れないといいつつ被災地に対しては傍観者である多くの日本人と、日本に対して傍観者であり続ける多くの外国諸国と日本にいない人々。
そして、怪獣の戦いを興味深く眺めていた、何もしない芹沢博士。
この映画は、傍観者であることのさまざまな姿をたくさん感じた。

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