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◇トルコ旅行記 〜6月3日 トプカプ宮殿2〜2007年07月03日 20時10分41秒

トプカプ宮殿の厨房の遠景。大きな煙突がいくつも並んでいる。

■トプカプ宮殿2


とてつもなく広い厨房の見学を終えても、それ以上に広い宮殿の中のまだ半分も見ていない。
厨房の見学で面白かったのは、スルタンに仕える人々が食事で意思表示をしていたということだ。自分の仕事やその報酬に満足している場合は、食事をたくさん食べることで意思表示する。反対に仕事内容に不満がある場合や抗議したいときには、食事に手をつけないことでスルタンにその意思を伝えたらしい。ハンストとはよく言うが、実際にハンガーストライキが現実にスルタンとの交渉に用いられていたというのが興味深かった。また、トルコでは客人には食事をたくさん用意して歓迎の意を表すと何かで読んだが、昔のこういった風習が今でも残っているのだろうか。そうすると、客人も出された食事を充分に食べることで、歓迎に対する感謝の意思を伝えなければならないのだろうなと思ったりもした。


 
銀細工のミニチュア。細かい細工がすばらしい。   銀のお茶道具。
     
   
第二内庭の風景。木の幹に穴のあいた木が多く、その中に入って涼んだり写真を撮る人が多かった。
   


厨房が並ぶ第二内庭を抜けるとバービュスサーデット(白人かん官の門)に到着するが、見学者でごったがえしていてなかなか中に入れない。英語ガイドについて歩いている人たちのかたまりに続いて門の中に入ると、第三内庭に入る。この庭の中には、謁見するための建物や図書館、遠征隊の訓練学校などがある。かん官用のモスクもあり、遠征隊がここで全ての生活をまかなえるように作られている。
どこの国でもそうだろうが、スルタンおつきの軍隊ともなると当時は大変なエリートだったのだろう。このような絢爛豪華な場所で毎日を過ごすというのはどんな気分なのだろうか。
ここを歩いているときに、つくばにいたとき工業技術研究所(現 産業技術総合研究所)で働いていたときのことを思い出した。工技院ができた当時、つくばの町はまだまだ何もないところだったので、工技院の敷地の中は病院、スーパーマーケット、散髪屋、スポーツ施設まであらゆる設備が整っており、この中だけで生活ができるようにできていた。単身赴任の研究者の中には、ほとんど宿舎に帰らずここで大半の生活をまかなっている人もいたので、長くつくばに住んでいても町中のことをほとんど知らない人もいたりした。今も昔もエリートのいる場所というのは、どこか俗世とは違うのだなあと思ったのだ。

宝物殿に入ると、そこにはスルタンが各国から集めた宝の数々が展示されている。金や宝石などがちりばめられた杖や、ナイフ、壷、食器など大変きらびやかだ。近隣諸国からの貢物もあるが、オスマントルコは武力で国を広げていった経歴があるのでその結果集められたものも多い。これらの宝物を見て、一大帝国を築いた歴史が改めてうかがえる。
スルタンの肖像画が展示されている部屋には、立派な髭をたくわえた歴代のスルタンに会うことができる。



 
バービュスサーデッド(白人かん官の門)。   謁見の間の内側。ステンドグラスとタイルの装飾が涼しげで、中に入るとひんやりと気持ちがいい。
スルタンが来客の謁見をするための建物らしいが、スルタン自身が実際に使用することはなかったらしい。
     
   
外から見た謁見の間。屋根の装飾が見事。    



レストランから見たボスポラス海峡の景色。

■トプカプ宮殿のレストラン

順路に従って第三内庭の右側の見学が終ると、その先にカフェとレストランがある。時間も13時近くなっていたので、そこでやっとお昼をとる。
中は事務所も併設されており、建物の内側をぐるっと周ると展望テラスがありそこの一画がレストランになっている。入ると左がロカンタで右がレストランなのだが、案内が不十分で入口がどこかわからない。ぐるぐる同じところを二周していると、お店の人が「ランチ?」と聞いてきたので旦那が「イエス」と答えると強制的にレストランに案内されてしまった。席に着いてから「私はロカンタで好きなものを注文したかったのに」と文句を言うと、旦那はロカンタが見えていなかったらしい。左手に大きなショーケースがあって、ビュッフェ形式でみんな並んでいたというのに。すでにメニューがきてしまっておりいまさら「ここで食べたくない」とは言いづらく、あきらめてレストランで食事をとることにする。案内された席はボスポラス海峡と対岸の町並みが一望できる気持ちの良い席だったが、団体さんが多く様々な国の旅行会社の添乗員がでかい声で説明しているのがあらゆる言語で聞こえてくるので、中はけっこう騒がしい。

周囲の人はワインを楽しんでいるが、この陽気でアルコールが入ると絶対にだれてしまうのでアイラン(しょっぱいヨーグルトドリンク5YTL / 約470円)を注文すると、アルコールを強く勧めていたギャルソンはちょっとむっとした顔をした。メニューにチャイがないのが残念。
食事は、野菜のオリーブオイルグリル(16YTL / 約1500円)、ドネルケバブ(23YTL / 約2150円)、チーズプレート(16YTL / 約1500円)を注文する。サービス料込みで合計68.2YTL。おつりはチップにしたので70YTL(約6500円)支払い、昼食としてはかなりの出費。一品の量は町中のレストランと比べると少なく、料金は逆に高かった。
一番最初にお決まりのパンが運ばれ、その次にアイランがくる。ドネルケバブは付け合せの香辛料が四種類。フェンネル、バジル、唐辛子と何故か日本の「ゆかり」があった。これは私たちが日本人だからなのか、それとももともとこの料理の付け合せとしてここのレストランが利用しているのかは謎だが、試してみるとゆかりはけっこう羊のケバブに合っていて美味しかった。
重い油っぽいチーズの四種類。ねじってあるチーズが異様にしょっぱく、しかもどれもこってりと重いので残念ながらこれは半分残してしまった。



 
アイラン。パックのものよりヨーグルトが濃厚で美味だった。   野菜のオリーブオイルグリル。油たっぷりに見えるが、食べるとけっこうさっぱりしている。
     
 
ドネルケバブ。肉がやわらかくジューシー。少しだがピラウも付け合せについている。   ドネルケバブの付け合せ香辛料。一番奥のが「ゆかり」。
     
   
チーズの盛り合わせ。しょっぱくてこってり。
   


レストランのお客は団体観光客と年輩の人が多い。私たちの席の通路をはさんだ隣の大きなテーブルでは、アジア人の年輩の団体さんが食事をしていた。一番近い席にいた女性が「日本人?」と聞いてきたので「そうです」と答えると、私たちのテーブルにある料理を覗き込みなにやら周囲の人と話している。団体さんは団体用のお決まりメニューだったらしいのだが、私たちに話し掛けてきた女性の旦那さんとおぼしき男性が添乗員さんに交渉し好きなメニューも頼んでいいことに決まったらしく、添乗員さんがでかい声でその説明をしているのが非常に目立っていた。彼らは私たちが残したチーズ盛りがうらやましかったらしい。

そうしているうちに私たちの後の席に西洋人の家族連れが案内されるが、聞こえよがしに「日本人のそばに座りたくない」と英語で言っているのが聞こえてきた。他の席に案内されたが、そこはオーシャンビューの席ではなかったらしく、数分後に再び後の席に戻ってきた。その頃には隣の団体さんも食事を終えていなくなっていたので、個人客の私たちが日本人だとしても彼らとしてはOKだったのだろうか。
ふだん意識はしていなくても、この手の西洋人のアジア人に対するプチ差別はよく目にした。実際に私たちも「え〜」という目にあったりもしたが、たいした差別ではないので気にもせずに過ごすことができた。これはイスタンブールでの毎日が大変爽快で、そんな細かいことはいちいち気にする必要も感じなかったからだろうと思う。逆にトルコの客引きに話し掛けられても完全無視して通り過ぎる西洋人が多い中で、日本人ということで話し掛けられる率は多いものの、それを楽しむことができたことで「日本人としてトルコに来てよかった」と思うこともあったのだ。西洋人のこうした差別にも、「アジア人、日本人で何が悪いの?」という気持ちの方が強かったのは、私の中にも日本人としての誇りみたいなものがちゃんと存在していることを確認することでもありそれはちょっと嬉しかったりもしたが、そういうことを差別されないと判らないというのもかなり情けないとも思った。

帰り際にレジの前で0.5YTLのコインを拾ったのでレジの人に「落ちてました」と渡すと、受け取ったギャルソンはなにやら異様に喜んで周囲のスタッフに見せびらかしていた。
トイレに行くと女性用は長蛇の列。列の最後尾でトイレの管理人の女性が後からきた人に並ぶよう促している。トイレの入口はひどく狭くて、個室は3つしかない。私は歯磨きをしたかったので、管理人に歯磨きグッズを見せて歯磨きのボディランゲージで伝えると、中に入って良いというお許しが出た。列の最初に並んでいる人に同じことをすると快く道を空けてくれた。中に入り歯磨きをするが、洗面所もとても狭く手洗いの人のじゃまになってしまう。それでも歯列矯正中の私が懸命に歯磨きをしてるのを知ると、みんな「かまわないわよ」というように笑顔を向けてくれるので、とても嬉しかった。言葉を理解できるできないに関わらず笑顔というのは大変大切なのだと感じてしまう。
歯磨きを終えて外に出たがやっぱり用をすませておこうと思い、列に並びなおした。並んでいたときにさっき列の最初にいた西洋人の女性が洗面所で首を洗っており、それをぼーっと眺めていると私に向かって「混んでていやね」というようにちょっと笑ったので、私も同じように笑顔で応じた。

レストランの外のテラスに出ると、そこは大変良い景色。風も爽やかで気持ちがいい。ボスポラス海峡を航行する船が行き交うのが見える。この景色をバックに二人で写真を撮りたいが、なかなか頼みやすそうな人がいない。こういうときに二人旅行は困ったりするのだ。
ふと見ると、昭文社のガイドブックを広げてうろうろしているカップルがいる。こんな人ごみで日本語のガイドブックを広げて歩いているということは、「私は日本人です」と宣伝して歩いているようなものである。町中や観光地でガイドブックを堂々と広げているのも、たいていが韓国人か日本人だったりする。
私たちも聞かれれば「日本人だ」と答えはするが、積極的に日本人であることを宣伝して歩きたくはない。日本人は金を持っていると思われているので、スリや客引きに狙われやすいからだ。ガイドブックにも「人ごみや町中でガイドブックを広げると日本人だということがわかるので注意」と書かれていたし、ネットでも「地球の歩き方の表紙は遠くからでも大変目立つ」と書かれていた。それでも町中でどうしてもガイドブックを確認する必要があるので、私たちはホテルのフロントにあった英語のリーフレットで表紙にカバーをして持ち歩いていたのだ(まあ、旦那と二人で話しているのを聞けば簡単に日本人だとわかるのだけど、注意は必要だと思う)。
嫌味だとは思ったが思い切り日本語で「すみませんが、写真を撮っていただけないでしょうか」と声をかけると、その人たちは「日本人に声かけられちゃったよ。嫌だなあ」という顔をしつつもカメラを受け取って写真を撮ってくれた。その後、彼らがそのことに気づいてくれればいいと思ったが、わざわざ説明するのはもっと嫌味なので日本語でお礼だけ言ってお別れした。


つづく

コメント

_ 寺内大輔 ― 2007年07月06日 13時28分43秒

 私も4月にトルコ行ってきたばかりなので、まだ記憶に新しく、makuraさんの旅行記を読んではいろんなことを思い出しています。

 私がトプカプ宮殿で最も衝撃的だったのは、あの、宝物殿の宝物です。宝石を嵌め込みまくっている物品の数々にはくらくらしました。宝石に乏しければ、細かい装飾模様などが発達するのかもしれませんが、宝石が豊かなのであまり微細な装飾模様などは見受けられませんでしたね。とにかく「宝石嵌めとけー」みたいな、、、。

 大きいクリスタルを繰り抜いて作った箱にも驚きました。繰り抜くかよ、、、、、と。

 昨年12月にウィーンに行って来たばかりで、ハプスブルグ家の宝に舌を巻いていたのですが、トプカプの宝を見たとき、「こりゃあ、ハプスブルグ家でさえ、霞むわ」と思いました。

_ makura ― 2007年07月07日 23時43分46秒

寺内さん、こんにちは^^。ありがとうございます。

トプカプ宮殿の宝物は圧巻でしたね。もうこれでもかというくらいキラキラしていて、宝石がちりばめられた道具などは「本当に実際に使ったんかい?重くないのか?」とつっこみいれたくなるくらいすごかったです。
クリスタルの箱は私も「繰りぬいたところはどうしたのだろう」とそっちの方が気がかりでしたw。本当に権力がある金持ちの考えることってよくわかりません。「もったいない」という気持ちは逆に禁句なのかもしれないです。

私は今回トルコが初めてのヨーロッパで、これまでは中国圏にしか行ったことがないのですが、中国も長い年月の間に色々な宝を溜め込んでいるけれど、どこかわびさびがあるのはアジアの特徴なのでしょうか。
アヤソフィアにしても、わざわざトルコ正教のイコンを残した状態でイスラム化していて、イスラム教徒がトルコ正教を制圧したということを後世に解るようにしているのだろうかと思ったりもしました。トルコの宝は本当に権力と富の象徴なんでしょうね。
今の世の中、庶民が昔の権力者の宝を拝めるだけありがたいのかもしれません。

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