◇追悼 “海賊”高橋照幸(休みの国) ― 2016年11月22日 05時02分05秒
高橋照幸(休みの国) - 第五氷河期
休みの国の高橋照幸の訃報を知ったのは、なんとなく彼の動向が知りたくなって調べていたときのことだった。
Twitterで彼の訃報を告げるツイートを見つけ、今年の2月には亡くなっていたことを知った。
休みの国リーダー・海賊こと高橋照幸さんの訃報を聞く。休みの国が表す瑞々しい唄世界は海賊さんが若い頃暮らした北欧の風景を彷彿とさせて大好きだった。高校生の頃、当時未発表だった『FY FAN』のコピーを戴いた感激は今も忘れられない。「マザー」「霧の中から」…名曲の数々。ご冥福を祈る。
— offnote (@offnote_info) 2016年2月15日
十数年前にライブを行ったきり、休みの国の公式HPの更新も途絶えて久しく、彼の好きな船に乗ってどこかに航海に行っているのだろうと思っていたのだ。
休みの国の古いメンバーであるつのだ☆ひろが、「また一緒にやりたい」と何かでコメントしているのを見たのも数年前のこと。
休みの国は何人かの参加メンバーが存在するものの、基本的には高橋照幸一人のバンドだ。
休みの国を知ったのは、30年ほど前に早川義夫のジャックスというグループのレコードが再販になったり、ジャックスに関連した書籍が発売になった頃のこと。
ちょうど東京の専門学校に進学することになり、新しく出会った友達と音楽の話などで盛り上がったりしていたときに、ゼミで知り合ったイケメンから「駿河台交差点の近くにあるジャニスというレンタルレコード屋に行くといい」と薦められたのがきっかけだった。
ジャニスには新旧のレコードが置かれていて、60年代、70年代のインディーズのレコードも充実していたばかりか、URCのアーティストの古い音源をカセットテープで無料で貸し出していた。
無料といっても、何か別にレコードを借りなければ貸し出しはされなかったので、実質おまけみたいな状態であったが、私は当時学生寮にいてレコードプレイヤーを持っていなかったので、半ばそのカセットテープを目当てに通っていたようなものだった。
専門学校は御茶ノ水周辺に校舎が分散していたので、ジャニスは在学中~九段下で働いていたときまで、私の東京生活にはかかせない店だった。
(ジャニスは今も健在で、CDレンタルのパイオニア的お店であることは変わらないようだ)
ジャニスでURCのレコードや無料のカセットテープを借りる中で、私はどうしても借りたいレコードがあったのが、休みの国の「FYFAN」だった。
このレコードは、当初URCから発売される予定だったのが、高橋照幸の許可なくしてジャケット等が変更された形での発売だったため、1988年に未収録音源を集めて限定発売されたらしい。
青いジャケットのそのレコードは、A面はURCから出た「休みの国」と曲がだぶっているものもあるもので、B面は日仏会館で行われた1974年のライブ音源だった。
通し番号のついた限定盤だったようだが、そのうちの一枚がジャニスの店頭にあったのだ。
「FYFAN」自体は、後日完全版としてCDで再発されたが、日仏会館のライブが入っている盤は再発されることなく、文字通り幻のレコードとなってしまった。
友人に録音してもらったカセットテープは、今でも私の手元に残っている。
ジャックスはその時すでに解散しており、早川義夫もその当時は本屋のおやじさんになっていたので、ジャックスのライブを見たいというのは叶わぬことだったが、休みの国は不定期にも活動を続けていることを知った。
何年もどうしても見たいと思っていたときに、ヒカシューの巻上公一が当時のパソコン通信Nifty-serveで後楽園遊園地のルナパークにおいて、ヒカシューのサックス野本和浩(故人)と演奏するという話をしており、それに一緒に参加するのが、なぎら健一と高橋照幸であることを知ったのだ。
雨の後楽園で初めて見た休みの国は、高橋照幸がギター一本で弾き語る「追放の歌」だった。
たぶん、1992年か1993年のことだったと思う。
追放の歌 休みの国Live@クワトロ
【YouTube注釈より】1991年5月26日に渋谷・クワトロで5thアルバム『Free Green』発売を記念しておこなわれた休みの国のライブの6曲目です。
それから何度か休みの国はライブを行っていたようだが、たまたまどうしても外せない用事があったりで、結局その後はライブに行くことはなかった。
リバイバルブームのおかげかどうかは解らないが、携帯の着メロやカラオケに「追放の歌」が登場したりした時期もあったが、それもいつの間にか姿を消してしまった。
噂を聞かないまま、たまに思い出しては公式HPを覗いたり、あちこち検索したりしていたのだが、まさか訃報から半年以上も経ってニュースに出くわすとは思わなかった。
つのだ☆ひろのドラムでのライブも見たかったが、叶う事はなくなってしまった。
冒頭に「第五氷河期」をもってきたのは、海野十三の「第五氷河期」という同名のSF小説(氷河期が来て日本に大地震が襲い火山活動が活発になると予言した博士の物語)をモチーフにしたと思われる歌詞で、私はこの歌詞を2011年の東北地震の直後に見て涙が止まらなかったからだ。
第五氷河期
作詞・作曲:休みの国(高橋照幸)
凍てついた地上の パニックの中で
嘘をつかれて 忍び泣く
言い伝えはあったよ でも 夢はなかった
いつまでも 影だけが
さまよい歩く この地上
読みとれるだけの文字と
聞きとれるだけの言葉で
世の中は出来ているのさ
お前は生きていたか
汗は流れたか
いつまでも 影だけが
さまよい歩く この世界
copyright 休みの国
今現在、休みの国のCDはURCから出た最初の「休みの国」だけになっているらしい。
私は再発された正式版の「FYFAN」のLPを手に入れたが、CDを持っているので未だ針を落としていない。
高橋照幸の皮肉っぽいのにやさしく響く言葉を、何かあるときに聞きたいと思ってしまう。
もう新しい言葉を発してもらうことができないことは悲しいけれど、彼が本当の休みの国に行けたことを祈るばかりだ。
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