◇備忘録 蓼科高原旅行その1 蓼科高原まで ― 2010年11月27日 02時10分12秒

久しく旅行もしていなかったので、旅行サイトなどを調べて、長野蓼科高原に行くことにした。
海の方はよく行くが、山方面に行くのは初めてで、長野県に行くのも初めてだ。
あまりにも楽しかったので、旅行記を書いたが、備忘録になってしまった。たかが一泊二日の旅行で5回にも分けて書くことあるのかといわれそうだが、後で自分で見て「そうそう」と思うためのものなのでご容赦願いたい。
行ったのは、11月第二週の週末。長野の紅葉の時期は前の週がピークだったようで、実際行くまでは「もうはげ山みたいになっているのでは」と心配した。
高速へ入るまでに少し渋滞したが、中央道へ入るとすいすいと快適にすすむ。
道が山へ入るにしたがい、風景はどんどんとオレンジ色にシフトしていく。
途中の双葉SAで昼食をとり、一時間ほど休憩。
いろいろと美味しいものが人気のSAなので昼食を楽しみにしていた中、B-1グランプリでグランプリに輝いた「甲府鳥もつ煮」を食べてみたかった。 鳥もつ煮は、建物入り口付近の売店と、軽食コーナー、そして軽食コーナー奥外の売店の三箇所で売られていた。入り口付近と軽食コーナーは鳥もつ煮だけなのだが、軽食コーナー奥外の売店のは鳥もつ煮丼なので、ご飯も一緒にとれるそれを選択。昼食に鳥もつ煮丼と鹿肉コロッケを食べる。
しかし、出てきてびっくり。鳥もつ煮丼は直径12cm深さ15cmくらいの容器に半分くらいの量しかなく(ご飯の量だけでも80gくらいか。しかも小さな容器に肉が入って半分程度の量)、しかもあらかじめプラスチック容器に入っているものを電子レンジで暖めなおしたもの。味は悪くないものの、暖めなおしたので肉が固くてちょっと臭いが気になる。これで500円はとぼったくられた気分。鹿肉コロッケも、一口サイズで5個入りで500円。一個100円である。
これなら、建物入り口でパックで売っているものの方が、鍋から直接よそってくれるだけまだましだと感じた。
しかも中途半端な量で、お腹はちっとも満たされない。
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鳥もつ煮丼500円と鹿肉コロッケ5個入り500円 | ほうとう700円 |
宿の夕食が普段よりも早い時間ではあるものの、これでは途中で何か食べてしまいそうで、宿の「大量」と噂の夕食が入らなくなることを懸念し、もう少しお腹に入れておくことにする。
これだったら、最初から双葉SA人気ナンバーワンのビーフシチューにしておけばよかったなどと後悔はつきない。レストランでは、地元のワインやお肉を使ったビーフシチューやオムライスといった人気メニューから、山梨名物のほうとう、そばなどのメニューが並ぶ。
鳥もつ煮を食べるなら、軽食メニューで単品おかずであるので、それにご飯と味噌汁でもよかったかも。値段は少し高くなるが、こちらの方が絶対に量はまともだったに違いない。
おいしそうなものは色々あるのだが、結局軽食コーナーでほうとうを二人で一つ食べることにした。
軽食コーナーの注文システムは、病院の薬の呼び出しシステムのようで効率が良く、カウンターでへばっていなくても席で座って待つことができる画期的なものだった。
しかし、ほうとうは時間がかかり15分くらい待たされた。
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怖いもの見たさ(?)鳥もつ煮ドロップ | ||
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ご当地チェブラーシカ。 山梨限定ぶどうと桃 | おいしい桃ジュース |
食事を終えて売店をひやかし、外で果物を売っているところで、ピーチジュースを飲む。ピーチジュースは果汁100%で、ネクターよりもすっきり飲みやすい。
売店にはおみやげ物コーナーでお馴染みのご当地キティちゃんなどと並んで、ご当地チェブラーシカを発見。山梨限定は桃とぶどうの二種類。チェブラーシカも、ロシアからきてこんなところで出稼ぎさせられてるとは…と思いつつ購入。
入り口付近では、鳥もつ煮ドロップなるものも発見。自分で買うのは怖いので、旦那に買うよう勧めるが拒否された。しかし、どんな味かは興味があるが、これは結局購入しなかった。
あたれば4億円効果ともうたわれるB-1グランプリ。町おこしにはもってこいだが、ここまで露骨だとちょっと食傷気味である。
しかもぼったくり状態なのは歓迎できない。安くて美味しいというのは、何も価格の問題ではないと思うのだが。
ちょっとがっかりしつつもなかなか楽しめた双葉SAを出て、再び中央道へ。
窓の外の景色は、オレンジ色と遠い山脈の暗い山陰の陰影が色濃くなっていく。
宿へ行くには諏訪ICで降りた方が近いらしいのだが、諏訪ICと諏訪南IC間が工事のため渋滞しているという情報を見て、諏訪南ICで降りることにする。

ICを降りるとそこには田園風景が広がり、あちこちで焼畑をしている煙が上がっている。山里はオレンジ色一色で、両面に畑が広く広がる道を走っていく。
すぐ近くに日本アルプスが連なり、八ヶ岳も霞の向こうによく見える。
この風景は、なんとなく日高山脈を望む十勝平野の風景にも似ていて、郷愁をそそられてしまう。
ガイドブックには、蓼科方面へ行くには諏訪ICを利用と書かれていたが、絶対に諏訪南ICの方がお勧めである。
諏訪ICで降りると、蓼科高原までは市街地を走ることになるのだが、諏訪南ICで降りると田園風景を楽しめる。
都会から行くのであれば、ICを降りればすぐに田舎の景色が広がり、まっすぐな一本道を走ることができる。高原気分を味わうなら、ちょっと遠回りでもこちらの方が絶対いい。
ガイドブックにあった地図と道の様子がちょっと違っていたので、17号からビーナスラインに入るところで少し迷ったが、3時前には蓼科湖に到着した。
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蓼科湖周辺の紅葉。 左はボート乗り場前。右はキャンプ場前。 |
蓼科湖は小さな湖で、歩いても20分くらいで一周できてしまう。蓼科湖レジャーランドは、どこか取り残されたような昭和な遊具施設があり、ゴーカートやゲーム、子供用の小さな乗り物、ボート、水上自転車、レンタル自転車などの施設、湖の反対側にはキャンプ場もある。
子供がゴーカートに乗っているのを見て、ゴーカートに乗りたくなり嫌がる旦那をひっぱって乗る。コース三周で二人で900円。へぼいと思っていたが、けっこうスピード感があり楽しい。このガタガタしたところが、なんともいえない。
遊園地によくあるパンダの乗り物なども乗りたいが、これは大人にはけっこう敷居が高い。乗り物の遊具のほとんどは「大人は乗れません」と書いてある(当たり前だが)。
歩いて湖を散策するのもいいが、レンタル自転車を借りることにし、思い切って二人乗りのにする。
二人乗りの自転車は、サドルが50年前の自転車のように固く、とにかく尻が痛い。ハンドルも、後ろの人とタイミングを合わせなければならず、最初はぐらぐらして安定が悪くひっくりかえりそう。
なんとかバランスをとり、ギャーギャー叫びながらも無事湖を一周した頃には、尻と二の腕が痛くなっていた。
そのほか、ほったて小屋のような小さな「恐怖の館」とか野外なのにエアホッケーとかあったが、時間がなくなり断念。
昭和の魅力満載で楽しかった。
つづく
◇備忘録 蓼科高原旅行その2 豪族の宿 ― 2010年11月27日 02時16分17秒

蓼科湖で楽しんだ後、ちょっと道に迷いつつも4時頃に宿に到着。
宿は、楽天トラベルやじゃらんなどで「食事の美味しい宿」や「満足の宿」ランキングで上位に入る、蓼科温泉横谷峡「豪族の館 大東園」。
ここは、猪鍋や岩魚などの山の幸のご馳走が自慢で、宿の料理の写真を見ても大変な盛りだくさん。全部食べきれるのかという心配以外は、期待でいっぱいだった。
4時過ぎの到着だったが、すでに駐車場には車が数台入っている。
宿は豪族の屋敷を移築して改築したというもので、外観はとても赴きのある日本家屋。
入り口の土間から声をかけると、小柄なご主人が奥から出てきて歓迎してくれた。
フロント前の広間は、大きな囲炉裏があり、きじや熊、鹿などの剥製が飾られ、山の宿の雰囲気いっぱいである。
部屋に入ると、予約していた部屋より大きい部屋を用意してくれたとのこと。
天井の梁がむき出しになった部屋は、電球色の優しい蛍光灯で、壁側には電球利用のランプが下がっている。夜はランプの明かりで雰囲気満点。 大きな窓には障子が貼られ、外は落葉した樹々が眺められ、その向こうはコテージが見える。
予約したときに確認はしていたが、この宿は部屋にトイレや洗面台の設備はない。
大きな立派な鏡台は部屋にあっても明かりが電球色なので部屋は夜も朝もちょっと薄暗く、お化粧するときに顔色が見えない。
トイレと洗面所は同じ場所にあり、男女共用なので、ここで化粧するのも落ち着かない。
これにはちょっと困ってしまった。
トイレは水洗ではなく、昔あったペダルを踏むとトイレの真ん中の穴の蓋が開け閉めされて、必要量の水だけが流れる仕組みのもの(これはこれで懐かしく利用した)。
お風呂は21時までは男女別れており、この日は岩風呂は男性、檜風呂が女性用。21時からは風呂の前に貸切の札を立てかけて、自由に貸切風呂で利用ができる。
洗髪などを食事前にすませてしまえば、貸切風呂はそれほど長時間利用しなくてもいいので、効率的だ。宿泊数も多くないので、それほど待たずに利用できた。
18時30分に夕食。
大広間に行くと、テーブルの上にはコンロがあり、山菜の酢の物やしんじょの蒸し物などいくつかの小鉢が並んでおり、猪鍋の用意と岩魚の塩焼きが用意されていた。

この日のメインは、猪鍋と岩魚のお造り、岩魚の塩焼き、岩魚の土瓶蒸しである。
宿のコースはいくつかあったのだが、お酒がつくかつかないかの違いで内容はみんな同じな様子。
まず、食前酒代わりの山葡萄サワーで乾杯。その後地ビール「浅間連峰」、旦那はアンバーエールで、私はゴールデンエールを注文する。ゴールデンエールは苦味がさわやかで好きな味。
味噌仕立ての猪鍋は味噌が濃厚で、肉も臭みがまったくなくとてもやわらかい。
木桶に入った岩魚のお造り、鱒の握り、地野菜とりんごの天ぷら、岩魚の土瓶蒸し、蕎麦が出たところで、旦那がダウン。
「鍋を雑炊にいかがですか」と主人がテーブルを回るが、宿泊客5組中ご飯を注文したのは若いカップルの1組のみ。ご飯は丁重にお断りし、デザートの柿とグレープフルーツとりんごを食べて(旦那は食べきれずに部屋へお持ち帰り)、下を向くと出てきそうなくらい満腹で部屋に戻った。
部屋に戻って一服する。酒が入っていたので、風呂はパスして早く寝たかったが、せっかくの貸切風呂なのでさっと温まって寝ようということで、男風呂になっていた岩風呂へ。
女風呂の檜風呂は岩風呂よりちょっと狭いが、檜風呂は窓が大きくとって外が見えて開放感がある。お湯の温度も、岩風呂の方が温度が高めだった。
10分ほどで部屋に戻り寝てしまう。就寝は22時。ふだんは酒が入ると寝つきが悪くなのだが、この日は疲れたせいかすぐに眠りにつけた。しかし、あまりに早く寝すぎたせいか、夜中に何度も目が覚めた。
7時頃に目が覚め、朝風呂へ。檜風呂が空いていたので、そちらを利用する。
8時に朝食。前の日あれだけ食べておきながら、次の日の朝はしっかり腹がすいている。
朝食は、焼き鮭(あるいは鱒かも)、サラダを中心とした松花堂弁当風のもの。夕食で食べなかったご飯が美味しい。
味噌汁は、前日の猪鍋で使用した鍋に入って、目の前のコンロで温めておかわりが自由にできるよう供された。具はきのことねぎ。何故か猪の肉と思われるものも入っていたので、前日の猪鍋のスープが味噌汁に利用されているのかもしれない。
デザートは梨とパイナップル。
食後に、ホールの囲炉裏を囲んでコーヒーのサービス。
ご主人が、「今年はきのこが豊作で山でもいっぱい取れたけれど、毒キノコさわぎがあったので宿で出せなかったのが残念」と話していた。
10時前にチェックアウトをして、宿を後にした。
玄関前で奥様が声をかけてくださり、ちょっと立ち話。一週間前に強風が吹いて、紅葉が全部落ちてしまうのではと心配したという話を聞いた。
今私たちがこうして落葉間近の紅葉を楽しめるのも、強風にも耐えてくれたおかげで、散り際の紅葉の美しさを堪能し、宿でも山の幸をこれでもかと堪能できて、とても充実した時間を過ごすことができたと伝えた。
ご主人も奥様も気さくな人で、口コミ通り気持ち良く宿を利用することができた。
つづく
◇備忘録 蓼科高原旅行その3 横谷峡 ― 2010年11月27日 02時19分16秒

宿にチェックインしたとき、宿の主人から先に近くにある滝を見に行くよう勧められ、夕食前に散歩がてら夕闇せまる横谷峡を歩く。
宿からちょっと歩いたところから「横谷峡」の大きな看板のある方へ入ると、その先には蓼科パークホテルという白い大きなホテルがあり、ホテルまでの道は夏場はリゾート地として賑わっていそうなお店や羊のオブジェが並び、白樺の街路樹が美しい。
お店はレザークラフトやソーセージの店などいろいろあるが、今はシーズンオフのしかも夕暮れ時なので、レザークラフトのお店しか営業しておらず、ちょっとさびしい風景。
この道の先に乙女滝へ行く道があり、横谷峡のトレッキングコースへと続いている。
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横谷峡入り口 | 蓼科パークホテル前の白樺道 | |
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横谷峡案内図 | 横谷峡氷滝郡の案内 |
途中、ホテルの前に「木戸口神社」という小さな神社があり、社までは階段が急なので、鳥居の前から失礼して簡単にお参りする。鳥居前の説明書きによると、武田信玄ゆかりの神社とのこと。
社の四隅には新しい柱が建てられていて、宿の奥様に後で聞いたら、つい最近立てられた御柱であるとのこと。
長野県は今年は7年に一度の諏訪神社の御柱の年で、関係のある神社は全て柱が建て替えられるのだという。御柱の年は、特にご利益があるとも話していた。
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乙女滝 | 乙女滝前のマイナスイオン指数 | |
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滝の上の道路のマイナスイオン指数 | ||
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夕暮れの山並みの景色 | 山に浮かぶ半月 |
木戸口神社を左手に過ぎると、道の右手に階段があり、それを下りると乙女滝に到着。
マイナスイオン指数20000個/ccという看板が、なんとなくおかしい。
夜はライトアップされているのか、大きなライトがそばにあるが、けっこう暗くなっているのにそれが点灯することはなかった。
ちょうど蓼科パークホテルの前に差し掛かったときに、ホテルから大勢の人が出てきて、やはり乙女滝に向かっていた。乙女滝の下は川に下りることができ、そこから先は横谷峡のトレッキングコースになっている様子。
ホテルの人たちは川べりまで降りようと移動していたが、周囲を山に囲まれた滝のあたりはすでに薄暗く、私たちはそのまま引き返した。
階段を上りきると、すでにあたりは暗くなっていて、山間に見える山並みや月がとても綺麗。
滝の真上に来ると、そこでのマイナスイオン指数は1500個/ccとされる看板があって、マイナスイオンの表示の力の入れようがさらにおかしかった。

二日目の朝は、宿の主人に勧められた、横谷観音展望台から眺める大滝を見に行く。
大滝は横谷峡トレッキングコースの一番奥にあるのだが、トレッキングするにはそれなりの装備と体力が必要で、日ごろから運動不足の私たちには向かない。せめて上から拝顔しようと、メルヘン街道を山奥に進む。
山から見た里は朝もやにけむり、落葉しかかった紅葉のグラデーションが見事だ。
横谷観音展望台は山の上にある。展望台の駐車場から展望台までの遊歩道の樹々はすでに落葉した後で、落葉した針葉樹の葉でオレンジ色に染まっていた。針葉樹の林に入ると、なんとなく北海道の道を歩いているような気分になる。
途中、大滝神社の素朴な鳥居の前でお参りし、数分で横谷観音展望台に到着。
展望台からは大滝が遠く下に見え、その雄大さはやはり下で見ないと味わえないのかと思いつつも、滝を眺め、山の中で鳥が鳴き、紅葉の中の里とその向こうに雄大な山の見える風景にしばし心を奪われる。
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横谷観音展望台の遊歩道 | 横谷観音 | |
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横谷観音展望台から眺める大滝 | 大滝神社の鳥居 |
帰り道、大滝神社の鳥居の前を通ると、周囲の草は揺れていないのに、鳥居にかかる幣だけが風に吹かれて大きく揺れているのを見た。大滝神社の社はそこから更に10分山道を登ったところにあるので行かなかったが、山の風の通り道に鳥居が建てられていることの意味を目で確認したようで、山の神様を感じたような気がした。
つづく
◇備忘録 蓼科高原旅行その4 蓼科美味 ― 2010年11月27日 02時22分08秒
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登美で食べた蕎麦 |
横谷観音展望台からメルヘン街道に戻り、ビーナスラインに移動する。
プール平の近くにあるお土産とお酒を売る店で、ワインを物色。最初は昨日飲んだ地ビール「浅間連峰」が目当てだったが、長野のワインに目移りする。
お店の奥さんにお勧めを聞くと、今時期にしかない「五一」の蔵出し生ワインというのが今あるということで、自宅用にそれを購入。赤と白と迷ったが、今年は白が出来がいいというので白を購入した。
こうなると、ワインに合う食材もほしくなる。
前日にビーナスラインを通る途中で、パン屋とソーセージ屋をチェックしていたので、そこへ向かう。
ソーセージ屋はイングリッシュガーデンの近くにある、ログハウスの小さなかわいい店舗。お店で扱う品物は「レストラン・ピーター」と書いてあるが、調べると「ザ・ババリアン・ペーター・タテシナ 信州蓼科高原」という店名らしい。以前はレストランもあったようだが、現在はお店での販売のみとのこと。
中に入ると、すかさず奥さんが「初めてですか?」と声をかけてきた。
「当店ではまず味見をして、それからお選びください」と最初に鹿肉のソーセージを試食させくれる。その後、皿に数種類のお勧めソーセージの試食。どれも塩味がきつすぎず、さっぱりして美味しい。ベーコンも燻製の香りがとてもいい。
私たちの後から来た人たちは、ちゃんとHPをチェックしている様子で、どうやらあちこちのマスコミでも紹介されている有名店らしいが、私たちはまったく知らなかった。
試食したソーセージの中から、軟骨入りウインナーと、バーベキューソーセージ、ベーコン、試食はなかったがカウンターで見て美味しそうだったサラミとブルーチーズを購入した。
サラミとチーズは帰宅した日に、生ワインの肴になった。サラミは、サラミにありがちないやな臭いはまったくなく、良い香りが口にいっぱい広がる。ワインは蔵出しなので風味が若く、ドイツ風で甘めのものだった。サラミやチーズとよくあって美味しかった。
ソーセージは、ベルギービールのお供で食べた。焼いて食べた二種類のソーセージは、すっきりとした味わいが美味しい。サラミはこの日ジャーマンポテトに入れてみたが、加熱すると別な香りが楽しめた。
前日見かけて目当てにしていたパン屋は結局見つからなかったので、そのまま茅野市街方面へビーナスラインを降りて行く。昼は蕎麦と決めていたが、街道沿いには蕎麦屋が軒を連ねていてどこがいいのか検討もつかない。
パン屋は、見かけて最初のパン屋に入ろうと決めると、渋川橋を茅野方面にまっすぐすすみ、ガソリンスタンドをちょっと過ぎたあたりで、「パン」という看板を見つけて入る。
小さなお店だが、メルヘンチックな雰囲気はあたりの予感。お店の名前は「けろっく」。
中に入ると、具入りのパンばかりで食事パンがない。できればソーセージを食べるときに食べたいので、バゲットかカンパーニュがいいのだが。
お店の人に聞いてみると、ちょうどバタールとバゲットが焼きあがったところだと、奥から出してきてくれた。
香ばしい香りは大当たりの予感で、結局バタールとチーズフレンチなど、数種類購入した。
こらえきれずに焼きたてを車の中でつまんだが、バターの風味が香ばしくとても美味しい。次の日の朝食でも食べたが、冷めてもパンが固くならずにしっとりしている。
ヘルシーなパンが多い中、久しぶりにどっしりと本格的な美味しいパンに出会えて大満足。

けろっくで「パン屋さんに伺うことじゃないかもしれないですが」と前置きをして、このあたりの美味しい蕎麦屋はどこかと聞く。「あまりにも多すぎて…」と言うと、「すぐそこのお蕎麦屋さんが美味しいです」と教えてもらう。「多分、このへんでは一番美味しい」との言葉。
行ってみると立派な造りのお蕎麦屋さん。神奈川あたりだと、ざるで1500円とかとられそうな店構えだ。
けろっくでは、「いつもは駐車場から車がはみだすくらい混雑している」とのことだったが、ちょうど12時少し前でまだピーク前だった。
白いのれんの横に「新蕎麦」の表示。期待は膨らむばかり。
角の個室に通され、メニューを見るとお勧めの十割そばが900円、更科の「御前そば白雪」が840円と、ふらっと入ったそば屋がざるで1500円という経験がある者には、とてもうれしい値段だと感じる。天せいろや鴨せいろにも目が行くが、せっかくだから純粋に蕎麦を楽しみたい。
長野名物辛味大根のそばも味わいたく、これが田舎そばであるとのことだったので、更科、十割、田舎の辛味大根そばの3種類を一つづつ注文した。
![]() | 私の生まれた北海道帯広市は、蕎麦のおいしいところだ。 帯広には更科そばの美味しいお店があり、私はそれ以上の更科の蕎麦を食べたことがなかった。 ここの「御前そば白雪」は「白雪」というだけあって、蕎麦の真ん中のところだけを丁寧に粉にしたのを使っているため、本当に真っ白である。 更科は蕎麦の香りよりも喉越しが命だが、こちらも抜群で、帯広で食べた更科のお蕎麦以来、思い出の分を差し引いても、とても美味しいと思える更科のお蕎麦だと思った。 |
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![]() | 十割そばは、このあたりでは「じゅうわりそば」と呼ぶらしい。茨城にいるときは、「とわりそば」と教えられたので、土地によって呼び方が違うらしい。 新蕎麦の青い香りがさわやか。十割そばにありがちな、ぼそぼそ千切れるということもなく、喉越しも最高。 何より、そばとつゆとの相性が抜群である。 |
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![]() (田舎そばに辛味大根がのったぶっかけそば) | 田舎そばは、長野名物の辛味大根をのせた蕎麦で挑戦。 辛味大根の蕎麦は漫画「美味しんぼ」で紹介されてから、関東の蕎麦屋でもたびたび目にするが、ここの辛味大根は強烈な辛味の向こうにほのかな甘みがはっきりと感じられる。関東で食べる辛味大根は、辛さの方が勝ってしまうのが多く、新蕎麦じゃない時期だと蕎麦の方が負けてしまうこともある。 ここで食べた辛味大根の蕎麦は、蕎麦とのバランスがとてもあっていて、とても美味しかった。 |
会計を済ませて外に出ると、外は駐車場の空き待ちの人でごったがえしていた。早く入店してゆっくり美味しい蕎麦を味わえたことを幸運に思いつつ駐車場へ向かう。
駐車場待ちの男性が「出られますか?」と聞くので、私はそれを「いっぱいでせまくなった駐車場から車を出すことができるのか」と聞かれたと思い、「努力します」と答えてしまい笑われてしまった。
続けて「美味しかったですか?」と聞かれたので、三種類の蕎麦を食べてとても堪能したと話すと、「自分も宿で勧められて来た。鴨せいろが美味しいと聞いた」とその男性は早く食べたいと顔に書いてあるかの笑みで話してくれた。
「では、お先に」と空き待ちの人たちを横目に、蓼科を後にした。
あまり事前に調べずに勘で入ったお店がことごとくアタリだったので、ほとんど食べ物の写真を撮らなかったのが悔やまれる。
つづく
◇備忘録 蓼科高原旅行その5 諏訪大社と墨縄神社 ― 2010年11月27日 02時25分37秒

最初の予定では、この後山梨を抜けて富士宮に行こうと考えていたのだが、宿で「諏訪大社は今年は御柱の年でご利益がある」と聞き、予定を変更して諏訪大社に行く。
せっかく長野に来たのだから、長野を満喫する方がいいと思ったからだ。
蓼科高原を後にして、茅野の市街を抜けて諏訪大社本宮へ行く。
諏訪大社は、諏訪湖を中心として南に上社、北に下社があり、上社は前宮と本宮、下社は春宮と秋宮がある。
最初は諏訪湖も眺めたいとの理由で諏訪湖のすぐそばにある下社に行こうと思ったが、帰りのことを考えて諏訪ICに近い本宮に行く。
諏訪大社本宮に着くと、時期がちょうど七五三の頃なので、あちこちに着飾った子供とその家族が歩いている。
昔の七五三の子供は、お化粧させられてもどこか違和感があったものだが、最近の子供は化粧をしてもさまになってしまう。これも時代の流れなのかと感じる。
駐車場の上の方からパンパンという大きな音が聞こえ、時折ウォーという叫び声とラッパを演奏するのが聞こえてくる。
周囲にいる人は気になるようで、みんな上の方を見上げているが、誰かが「応援団の練習かな」と言うので、なんとなくそれに納得して先に進む。
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諏訪大社上社本宮案内図 | ||
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二の柱 | 布橋 |
駐車場が二の柱の前の表参道の近くにあったので、そちらからの参拝。
ここの鳥居の下にある太鼓橋を通り、御柱が宮内に入れられるらしい。
二の柱を眺め、長い布橋を渡る。
布橋からは、御柱祭のときに使用する「めどてこ」という大きな木の展示や、宝殿などを見ることができ、参拝所で七五三のご祈祷をするところも覗くことができる。

布橋を渡りきると、北参道側の鳥居に出て、一の柱や社務所、拝殿へ入る入り口などがあり、実際はこちらが表になっているようだ。
山へ続く表参道とは違い、北参道には土産物店や屋台が軒を連ね、神社の参道らし雰囲気である。
鳥居の前にはっぴを着た案内係の人がいて、観光客が集まると慣れた調子で説明を始める。
人はたくさんいるのだが、敷地内には山の空気と格式の高い神社の気が充満している。
古い神社や格式の高い神社は、本当のその敷地に入っただけで空気ががらっと変わり、そこにいるととても引き締まった気持ちになる。
観光客や七五三の人も多いが、地元の人も足を運んで小さな社にも丁寧に参拝しているのを見かける。
お土産にお守りを買い、おみくじをひくと大吉で、しかも何も障害がないなどとても良い事ばかり書いてあるのにすっかり気をよくする。土産物屋をひやかして、帰路につこうとしたところ、表参道の方からニッカポッカにいなせなはっぴ姿の人たちが続々と神社に入ってくる。
布橋横の奉納土俵のあたりで、ニッカポッカ姿の男性に「お祭りでもあるのですか」と聞くと、駐車場の上に大工やとび職の人の神様を祀る墨縄神社というのがあり、今日はその神社の御柱を立てる儀式があるのだと教えてくれた。「今ちょうどやっている」というので行ってみることに。
急な坂道をちょっと登ったところに小さな神社があり、そこで大勢の大工やとび職の人たちが柱に縄をかけて御柱を立てている。どうやらこれが最後の御柱の様子。
じゃまになるので、その様子を上から眺めるところへ行くと、横の広場で軍隊で使うようなラッパを持った人たちが出番を待っている。
御柱をまっすぐに立てるよう御柱に二人の若いとびさんが、御柱にくくられた縄だけでバランスをとろうとしている。その姿はいなせでとてもかっこいい。周囲で見守る年配の人たちも立ち居振る舞いだけでもいなせだ。
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墨縄神社 | 御柱を立てる様子 |
うまくバランスがとれ柱を支えていた縄がとかれると、目の前に幣を持った女性が無事終了したという意味の歌を大きな声で歌い、それを合図にラッパが鳴り響きみんながウォーという叫び声をあげて、儀式は終了した。
どうやら、私たちが来たときに駐車場で聞いたパンパンという音は、柱を立てるときの作業の音で、ラッパと叫び声もこの儀式のためのものだったようだ。
やはりこの声を気にしてこちらに先に来ていれば、柱を立てるところから見ることができたのにとちょっと残念に思ったが、7年に一度のめったに見られない儀式を見ることができて、とても嬉しかった。
墨縄神社の裏に小さな公園があり、女の子がブランコに乗りながらシリトリをするのが聞こえてきたのだが、「お」のところで一人が「おんばしら」と言っていたのに、この儀式がこの地域では地元の人に根ざしたものなのだということを感じた。(「おんばしら」の次は「らっぱ」だった)
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諏訪湖 | 葦原 |
諏訪神社本宮を出たのが2時頃だったので、まだ少し時間があると諏訪湖の方を回っていくことにする。
15分ほどで諏訪湖が見える道に出たので、帰る前にお茶でも飲みたかったが、適当な場所がない。仕方ないのでそのまま川沿いの諏訪ICに出る道に入ると、ものすごい渋滞に入ってしまった。
諏訪湖から40分ほどかけて諏訪ICに到着したのだが、途中川原が葦原になっていて、傾きかけた太陽に照らされとても綺麗だった。このあたりは諏訪だけれど、隣の「茅野」という地名のイメージと重なった。
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八ヶ岳PA 串牛タンつくね |
この後、諏訪ICから諏訪南ICまでの工事で渋滞、その後相模湖IC付近で大きな事故があり、大月まではスムーズに流れたものの、大月を過ぎたトンネル内で大渋滞。1km走るのに30分以上の時間を要さなければならず、行きのスムーズな流れはうそのよう。
結局、目的のICのひとつ手前で高速を降りたが、当然のごとくIC付近の公道も混雑しており、まともに走ることができたのは9時過ぎ。
2時半頃に諏訪湖にいて、途中八ヶ岳PAで休憩したのが4時前のこと。この時けろっくのパンと売店で売れ残っていた串牛タンつくねを食べて腹ごしらえをしたのだが、これがなければもたなかったかもしれない。
市街地に入ると混雑もなく、途中でラーメンでも…という誘惑もあったが、とにかく家でワインを飲みたい一心で車を走らせ、自宅についたのは22時を回った頃であった。
おわり
最近のコメント