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◇トルコ旅行記 〜6月6日 イスタンブール最後の夜〜2007年09月11日 13時33分00秒


最後の日の夜にホテルのバルコニーから撮影したボスポラス海峡の風景。この風景ともこの日でお別れ。曇り空でイスタンブールの町の灯りが雲に反射している。

■古いトルコ文字書きのおじさん

客引きと別れると、アヤソフィアの前の交差点の角にトルコの古い文字で名前をカリグラフで書いてくれるというおじさんがいた。E夫妻が「ブルーモスクの前にいたんだけど、昨日は見かけなくて残念だった」とその日の朝に言っていた人だ。最後の日だし、イスタンブールの記念に一枚書いてもらうことにする。値段を聞くと、綺麗な縁が印刷された大きな紙で15YTL、小さいので10YTLだというので、父の名前と私たち二人の名前と二種類注文する。空は曇り空でいまにも雨が降り出しそう。
書いている間にそういう文字はいつ覚えたのかなど旦那が質問すると、「自分のお父さんがこの文字を書くプロで、自分も幼い頃から覚えさせられた。自分は元は警官で、数年前に退職して今はこの文字をデザインする仕事をしている。この文字は古いトルコで使われていて今は使われていないが、こういう文字を書くプロがトルコには何人かいて、文字のデザインはその人ごとに違う」というようなことを話してくれた。カリグラフのペンの入れ方などにコツがあるらしく、そのあたりは習字に近いものを感じた。書いているうちに雨が降り出してきて、出来上がったものをグレーの書類袋に入れてくれたが、質問したことに気を良くしたのか袋にもサービスに「イスタンブール」と書いてくれた。
そのうちに「自分の友達がこの近くで店をやっているので寄っていかないか」と言い出し、友達を呼んでしまう。すぐにやってきた友達というおじさんは、流暢な英語で「すぐにそこで土産物屋をやっているのでお茶でも飲んでいかないか」と誘うが、「すでにカバンに荷物を詰めてしまったから、いい」と断る。何度か断ると諦めたらしく、文字書きのおじさんと四人で写真を撮ろうということになり記念撮影と相成った。



古いトルコ語文字で書かれた「イスタンブール」。よく見ると日付が一ヶ月間違っている。



■イスタンブール最後の夕食後のデザート

夕食は入ったことのない店にしようと思いスルタンアフメットのトラムヴァイ通りを歩くが、目新しい店はない様子。あまりお金もないので、高級そうな店には入れない。疲れてしまい、結局通りにテーブルを出しているロカンタで食べることにする。店に入ると外の通りのテーブルに案内されてしまう。車の通りが多いし人も行き交っているので店内で食べたかったのだが、イスタンブールの街を見るのも一興だと思い、そのままそこで食事をすることにした。

最後の夜なのでビールを注文する。トルコのビールは濃厚だが味は軽めで美味しいので、すっかり私たちのお気に入りだが、飲みすぎると次の日に響くので二人で一本シェアする。店内のショーケースを見て、たまごとズッキーニの焼いたのと、ひよこまめ、トマト味のピラウ、なすのグリルを注文する。この旅行ですっかりケバブ漬けになっていたが、最後の日は肉は注文しなかった。
ずっと食事の写真を撮っていたのに、気が付いたときには食べ散らかしていて、最後の夜なのに食事の写真を撮らなかったのが残念。

食事の後に、同じ通りにある「O:ZSU:T(:の直前の文字がウムラウト)というお菓子屋に入る。ここはスルタンアフメットに来たときから目をつけていて、ショーケースにいつも美味しそうなケーキがたくさんおいてあるお菓子屋だ。スルタンアフメット地区では珍しくしゃれた明るい店内で大変そそられていたが、値段が高めなのと食事の後に重いケーキ類を食べると胃もたれがするので、特に旦那がいい顔をしていなかったのだ。「新市街でアイスクリームを食べられなかったから、最後にお菓子を食べたい」と訴え、そこに行くことにする。お店は通りの角にあり、店の外に小さなテーブルが二つあってイートインもできる。
店に入りショーケースに並べられたたくさんのお菓子を見て目移りするが、ビールを飲んでいたのであまり甘くないものにすることにする。見ると、巨大な磯辺巻のようなお菓子があり、「これは何か」と店員に聞くと「カザンディビ」との返事。「カザフスタンのお菓子か」と聞くとそうではないと言う。よくよく見ると海苔に見えていたのはこげのようで、どうやら焼きプリンのようだ。あまりに決めかねているのでテイクアウト用のメニューをくれたので見ると、「Kazandibi」と書いてある。見ると二種類あるが、どこがどう違うのかわからない。とりあえずショーケースにある「カザンディビ」を指差し、コーヒーとセットで注文する。お皿に盛られたカザンディビは、10cm四方もある巨大な餅のようだった。
胃もたれするとか言っていた旦那はチョコレートケーキが好きなのだが、食事が終わった直後だというのに「チョコレートバナナエクレア」を注文する。チョコレートだけでも胃もたれしそうだが、その上にバナナ?。しかもこのエクレアは15cmくらいの長さがあり、太さも7cmはあろうかというでかいものだった。
値段はカザンディビが4YTL(約372円)、チョコレートバナナエクレアが4.5YTL(約420円)、コーヒーがひとつ3.5YTLだった。

カザンディビは焼きライスプディングという感じで、トルコのお菓子にしては甘さが控えめで美味しい。それでも、巨大なそれを食後に食べるのは大変なことだった。旦那のチョコレートバナナエクレアは、想像していた通りに甘い甘いチョコレートと甘い甘いバナナがマッチして大変に甘い。エクレアのシュー皮の間にバナナがはさんであるのだが、そこにチョコレートクリームが大量にはさまっており、シュー皮の上にもチョコレートがコーティングされている。しかもその上から更にこれでもかとチョコレートソースがかけられているのだ。おやつに食べるにはよさそうだが、普段デザートを食べる習慣のない私達にはかなりヘヴィな食べ物だと思う。食べ終わった後「胃が苦しい…」と苦しむ旦那を見て、「自業自得」という言葉が頭をよぎったのは言うまでもない。



 

スルタンアフメットにあるお菓子専門店「ÖZSÜT」。
 
手前が焼きプリン「カザンディビ」、向こうがチョコレートバナナエクレア。

■ホテルでの最後の夜

ホテルに戻ってゆっくりしたいのはやまやまだったが、荷物をカバンに詰め込む作業が待っていた。イスタンブールの空港は、カバン一つにつき20kgという制限がある。人によって「一人20kg」と言う人もいたがそれは間違いらしい。しかし、チャイポットやチャイのグラスセットなどのカサのあるものやキリムや缶詰など重い荷物も多いので、できるだけ分散して詰め込まなければならない。
一番最初にパソコンを厳重に固定してしまいたかったので、ロビーに行ってその日撮影した写真をメモリに移す作業をしにいくと、いつもの夜のスタッフと珍しく昼間担当のバーのスタッフがそこにいた。写真をメモリに移し終え、スタッフそれぞれに「あなたたちのおかげで楽しかった。私たちは明日帰ります」というと、「みんな君のことが好きだったよ」と握手してくれた。「今度はいつイスタンブールに来る?」と聞かれたので、「さあ、近くて5年後くらいかなあ」と答えると「それは長すぎるね」と残念そうにしていた。そして「夜みんなここにいるので、後で話においで」と誘われた。

部屋に戻り、結局荷物を詰め込む作業は夜中の1時くらいまでかかってしまった。オスマンさんがキリムを買ったときにくれたカバンのおかげで、予備で持っていったカバンを使わずにすんだ。
荷物の詰め込みが終ると旦那は即効で眠ってしまい、私はロビーに下りていってスタッフと最後に話しをすることにしたのだった。

ロビーに再び行くと、お茶をごちそうになりいろいろな話をした。
「トルコの人は日本人が好きだけど、それはどうして?」と聞くと、「日本人は心が温かいじゃないか」と言う。だけど、私にしてみればトルコの人達の方がずっと心が温かいと思う。「日本人の心が温かかったら、トルコ人の心は燃えてるみたいだ」と言うと、ひどくうけたみたいでずっと笑っていた。
「アクセサリーを買いたかったが、ピアスの穴がないのに驚かれた」と言うと、「トルコでは女性はみんなピアスを空けている」とのこと。「私は母が空けてはいけないというので、未だに空けられない」と言うと、やっぱり驚かれてしまった。「男の人は空けないのか」と聞くと、「男で空けるは最近の若い奴かホモだけだ」と言う。トルコでもやはりホムセクシャルの人は方耳ピアスがお約束なのだそうだ。イスラムの世界でもホモセクシャルがいるということにも驚いたが、イスタンブールでは結構多いらしい。「最近の若いやつは信じられないよ…」と言うが、そういう彼は28歳なのだった。「28歳で年寄りみたいだ。私の友だちはあなたと同じ年の子供がいるよ(しかし、その友だちは53歳であることは言わない
)」と言うと、「日本人は若く見える。君だって18歳にしか見えない」と言うので「こないだは15歳だと言っていたじゃないか」と突っ込むと気まずい顔をしていた。
その他、彼らの仕事のことなど色々と話したが、食事と住居が提供されるホテルでの仕事はトルコでは良い仕事の一つなのだろうけど、その内容は結構大変そうだ。夜のスタッフは「夕方5時から朝9時まで働いて、仕事が終った後は付き合いで職場のサッカーチームの練習に参加しなければならない」とこぼしていた。これは大ボスの命令なので断れないのだそうだ。

トルコ職場状況は決していいものではないように思う。年若い子供が夜遅くまで働いているのは普通に見かけるし、就職事情もよくなく失業率も高いらしいので、仕事があるだけましということなのだと思うが、上下関係が厳しく上司の部下に対する態度も「こんなことが許されるのだ」と見ていて驚くほど横柄で過酷だったりするように感じる。日本だったら、ぶち切れてその場で辞めてしまう若者の方がずっと多いんだろうなと思ったりする。
街で会う客引きにしても、あれだけ語学が堪能なら別な仕事を希望してもいいくらいだと日本人の感覚だと思うのだが、イスタンブールの街で外国人を相手にするにはいくつかの国の言語を話せるのは普通のことのようだ。しかも外国語を勉強するためにお金を出してくれる絨毯屋の主人には、やはり逆らえないのだろう。だからこそ、トルコ人は過酷な労働条件から逃れる手立てとして、外国の女性との恋愛を熱望しているのかもしれないと、ちょっと思ってしまった。
スタッフの一人は実は22歳で、働きながら大学に行っているのだという。私は28歳の彼と同じくらいに見えたので驚いたが、後で22歳の彼が寝てしまってから「やつは大学に行くハイソサエティだからな」とぼそっと言っていたのが印象的だった。

結局3時頃まで話し込み、部屋へ戻ったらすぐに眠ってしまった。


つづく



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