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◇萱野茂 二風谷アイヌ資料館2006年07月05日 00時56分47秒

萱野茂二風谷アイヌ資料館前にあった看板

萱野茂二風谷アイヌ資料館前にあった看板

二風谷アイヌ文化博物館から国道237号線を挟んだ林の中に、萱野茂二風谷アイヌ資料館がある。
 萱野茂さんは、子供の頃祖母のユカラを聞いて育ち、アイヌが差別に苦しみそのアイデンティティを失っていた頃、登別で観光アイヌ(観光地でアイヌの民芸品などを売って生計をたてていた人たち)をしていた時に、アイヌ語の研究で北海道を訪れていた金田一京介氏と出会い、アイヌ文化の継承と保存に尽力した人である。アイヌ民族で初めて国会議員になり、アイヌ研究で博士号も取得した。惜しくも先日亡くなられてしまった。
 その萱野茂さんが、故郷の二風谷でこれまでの研究成果を資料館として残したのがここだ。

 
 
萱野茂資料館に
展示されているムックリ

Please click the image.

入口には「あなたの家から ここまで来るのに10万円 入館料は400円 時間がありましたらどうぞ!! ご入館ください」という看板が立っている。アイヌの人は明るくユーモアのある人が多いが、これも萱野さんの人柄が忍ばれる看板だ。
 小さな資料館だが、アイヌの生活用具から萱野茂さんが生涯をかけて編纂したアイヌ語辞典などが、所狭しと展示されている。アイヌの衣装も、コタンごとに違う紋様を地域別に分けて展示されていて、とても興味深い。

ムックリも数本まとめて展示されていた。その説明文には、「アイヌが持っている楽器は少ない中で、楽器らしいのはこれだけですが、人に聞かせるというより、その音色を自分で楽しむものでした」と書かれている。
 資料館の奥には広いホールがあり、壁にはアイヌの様子が描かれた絵画がかざってある。その中でも、ムックリを演奏する女性の図が圧倒的に多い。

 アイヌ語は聞けば聞く程、メロディアスで、普通の会話でさえ歌っているかのようだ。文字を持たなかったアイヌの人たちは、自分達の文化を語り(ユカラ)に託して後生へ伝えたらしい。ユカラもまた大変メロディアスだし、シントコの蓋をたたきながらリズムをとって歌を歌ったりというものはあったようだが、ムックリでさえごくごくプライベートな相手とのコミュニケーションの道具であったことを考えると、アイヌの音楽というのは楽器というよりは歌を中心としたものなのだろうと想像する。
 あくまで推測の域をでないが、神話などを読んでも、一度口から出た言葉は翻すことはできないという教えが何度となく出てくる。厳しい環境の中で人と人、あるいは人と神(自然)との契約がいかに重大なことかということを表しているように思う。 日常の会話や言葉のコミュニケーションを大切にしてきた民族だからこそ、楽器よりも人間が直接奏でる「歌」を重要視してきたのではないだろうか。

 二階には、カナダ、ロシア、中国、インド、アフリカ etc...の世界の民具が展示されている。どれも有志で集められたものらしく、目新しいものはあまりなかったが、鮭の皮で作られたマオカラーの中国風の服が印象的だった。アイヌ民族は、黒龍江沿いに住む民族と交流があり、その文化も酷似しているが、その周辺の民族のものだろうか。説明がないのではっきりしたことはわからない。

2階展示室の中央のケースには、世界の口琴も展示されていた。イタリア、欧州、フランス、中国、フィリピンなどの口琴があった。
 しかし、イタリアの口琴とされているのは、カザフスタンかキルギスタンの口琴のように見えるし、フランスの口琴とされているものは、どう見てもオーストリアの口琴にし見えない。フィリピンの口琴「クビン」は、ミンダナオ島のチボリ族のものと説明があるが、これだけなぜか口琴ではなく「ムックリ」と表記されている。こういう表記のひとつをとっても、口琴がいかにマイナーな楽器であるかがうかがえる。

帰宅してテレビをつけてみると、NHKで以前放映した萱野茂さんの番組が再放送されていた。資料館の横にあるチセの前でインタビューを受けたものだ。資料館にいったばかりだったので、萱野さん話していることが、資料館を見ただけではわからないことの補足になったようで大変面白かったが、突然のことで録画をするのを忘れてしまったのが悔やまれる。

 
カザフかキルギスの口琴のように思える
イタリア共和国の口琴
欧州の口琴
 
Please click the image.
     
 
オーストリアの口琴だと思う
フランスの口琴
フィリピンのムックリ「クビン」

 

萱野茂二風谷アイヌ資料館
http://www.ainu-museum-nibutani.org/html/sryo0N.htm

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